家族の絆づくり 137
円滑なコミュニケーションのための五つのスキル

ナビゲーター:阿部 美樹

「傾聴・質問」というエンジン、「承認」というガソリン
 円滑なコミュニケーションは、互いに言いたいことを言い合うことで成り立つのではありません。
 自分の考えを激しく言い合っても、互いに反発し合っていては後味の悪いコミュニケーションになります。

 まるで「ドッジボール」のように相手のボール(話)をよけたり(無視したり)、ぶつけ合ったりするようなコミュニケーションでは対立の関係になります。

 円滑なコミュニケーションにするためには、「キャッチボール」のように互いの話を受け止め合うことが必要です。
 相手の話を受け止めること、理解すること、認めることを通して信頼関係を土台とした建設的なやり取りができます。

 ですから、受け止める「傾聴」や引き出す「質問」、肯定的に認める「承認」が大切になります。
 車で例えれば、「傾聴と質問」はエンジンであり、「承認」はガソリンのような役割となります。

 現実的に受け入れられない話だったり、意見が違ったり、感じ方が違ったとしても、まずは相手の気持ちと意見を受け止めてみましょう。

 相手の立場になって聴くことを「共感」と言います。自分が動機となる「同感」や見下すような「同情」では、健全な信頼関係は築けません。

「提案・フィードバック」で導く
 傾聴だけを続けて、自分の意見を押し殺したり、伝えたりしてはいけないのではありません。
 伝えてもよいのですが「伝え方」が重要です。

 「それは、違うんじゃないの!」という否定、「あなたは、行動すべきでしょ!」という指示、「駄目じゃない、こうしなさい!」という命令、などでは納得できないことが多いものです。

 そこで相手を前向きに導く伝え方は、「提案」です。

 「私は、あなただったらできると思いますが、いかがですか?」「このようにしたら効果的だと思いますが、いかがですか?」「成功した人はこのようにしましたが、どうですか?」という提案です。

 また、相手を前向きに導くためには、「フィードバック」の仕方も大切です。

 相手の行動結果を見て、「できていないの? 駄目じゃない!」と相手を評価するフィードバックをしやすいのですが、評価せずに「できていないんだね」という「客観的な事実」だけ伝えてみましょう。相手はそれだけでも感じるところがあるはずです。

 さらに、「〇〇さんだったら、やってくれると期待していたんですよ」という「主観的な事実」を加えるとどうでしょうか。相手は真摯に受け止めてくれることでしょう。

 指示命令ではなく、「客観的事実」を伝えた上で「主観的事実」を伝えることで、相手は自分で考えて行動しようとするのです。