家族の絆づくり 136
「私のための質問」と「相手のための質問」

ナビゲーター:阿部 美樹

視点を変えると道が見えてくる
 会話を深めるためには、互いに言いたいことを言うだけでなく、傾聴や共感、うなずき、おうむ返しなどが必要ですが、その中でも、「質問」を活用することが有効です。

 質問には2種類があります。

 一つは、私が知りたいことの情報を得るための質問であり、「私のための質問」です。

 もう一つは、相手に気付きを得させるため、相手に考えさせるためという「相手のための質問」です。
 これは、与えられた質問によって視点が変わったり、新しい視点が提供されたりします。

 どうしたらよいか分からず困っている人には、「うまくやっている人は誰ですか? その人は何をしているのでしょうか?」という質問をすると、自分の視点ではなく、他人の視点で見つめるきっかけになります。

 また、「1年後の自分から見たら、今の状況はどのように見えるでしょうか?」という質問をすると、視点が未来に変わります。

 やることが多くて何からやったらいいか分からない人に対しては、「今のあなたにとって最も大切なことは何ですか?」という質問をすれば、分散した意識が一点に集中することができることでしょう。

 このように視点を変えることによって、気付きや変化が起こります。

アドバイスよりも質問が有効
 目標達成のため、問題解決のための方法を模索する時に有効なのは、「他にはどうですか?」という質問です。

 方法が一つ出てきたとしても、「他には?」と繰り返すことで、多くの選択肢を見いだすことができますし、可能性の幅が広がります。
 複数の方法が出てきたら、「その中で一番有効なものはどれでしょうか?」と質問すれば、再び意識が集中して優先順位を付けて行動することができます。

 一般的に、何か悩みを相談された時、「アドバイス」をして教えてあげないといけないと考えがちですが、その人の心が納得する方向性を出すことは簡単ではありません。

 同じ悩みを持っている場合でも、同じアドバイスがその人に当てはまるとは限りません。相手の事情や性格、生育歴などが千差万別だからです。

 ですから最も有効なことは、相手の心から引き出すことです。そのためには「聴く」ことと「質問する」ことです。