家族の絆づくり 134
幼少期の愛着の形成が人間関係を決定する

ナビゲーター:阿部 美樹

人への過度な警戒、過度ななれなれしい態度
 「愛着障がい」という言葉を聞いたことがありますか?

 何らかの理由で親や養育者と子供の間で愛情の癒着が形成されずに、情緒面や対人関係に問題が現れてしまうことです。

 人は、身近な親や養育者との愛着形成から、成長とともに周りの人との関わりを通して愛着を獲得していきます。
 この愛着関係が心の深いところに根付き、自立心や自尊心が育っていき、人間関係や社会性が発達していくといわれています。

 愛着形成が何らかの理由でうまくいかずに大人になると、自立心や自尊心が低くなりやすく、他者とのコミュニケーションが取りにくくなったり、社会生活や心身の健康に影響を及ぼしたりする可能性があります。

 医学的な愛着障がいは、「反応性アタッチメント障がい(反応性愛着障がい)」と「脱抑制型対人交流愛着障がい」の二つに分類されており、どちらも5歳以前に発症するといわれています。

 前者は人に対して過度な警戒をしてしまい、後者は人に対して過度になれなれしい態度をとってしまうということです。二つの障がいの性格的な特徴として似通っているのは、意地っ張り、強情、度が過ぎたわがままであることが多いといわれています。

大人の愛着障がいの克服法
 子供時代の愛着障がいが改善されないまま、虐待を受けた子供や、親や養育者との死別、最低限の世話はしてもらえるがコミュニケーションやスキンシップが極端に少ない家庭などに育った子供は愛着障がいを起こす確率が高いといわれています。

 子供の愛着障がいをそのままにしておくと、大人になってからも癒えないまま残り続けます。
 大人になって苦しむ人や、大人になってから自分は愛着障がいがあるのではないかと気付く人は少なくありません。また、幼少期の愛着障がいと違い大人の愛着障がいでは、高血圧、うつ病などの病気のリスクも高くなるといわれています。

 大人の愛着障がいの人の特徴としては、
・人間関係の距離感が極端になりやすく、トラブルを抱えやすい
・自尊心や自信が持てない
・自律神経や胃腸の不調などが続いている
・発達障がいと似た症状がある
 が挙げられます。

 大人の愛着障がいを克服する方法としては、大きく分けて三つあります。

①子供の頃に愛情を受けていたということを認識し直すことがあります。つらい記憶をたどっていき、愛されていた記憶を再確認するという方法です。

②愛情をパートナーや友達から獲得し直す方法があります。信頼できると感じることのできる身近な人たちとのコミュニケーションやスキンシップを通して、幼少期に得られなかった愛情を得ていくことです。

③自分の存在価値を認められる環境に身を置くことです。愛着障がいを抱える人は自尊心や自己評価が低い傾向にあるので、他者が自分の存在価値を認めてくれることで大きく改善していきます。