コラム・週刊Blessed Life 133
アメリカの対中政策の根本的転換

新海 一朗(コラムニスト)

 米中の対立はますます激しくなっており、南シナ海、台湾海峡、東シナ海、黄海など、いつ軍事衝突が起きるか分からないような緊張の高まりがはっきりと感じられます。

 アメリカが中国に妥協しない姿勢を世界の前に示したのが、7月23日のポンペオ国務長官によってなされた「中国共産主義と自由世界の未来(Communist China and the Free World's Future)」と題する演説でした。

 それ以来、米国は徹底して中国の軍事的違法行為(南シナ海の一方的な占有権を主張した軍事基地化)、経済的違法行為(知財の窃取による経済発展、ファーウェイなど)、政治的違法行為(香港、ウイグル、法輪功に対する人権蹂躙)を見逃すことなく糾弾しています。
 オバマ政権までのアメリカとは全く違う姿勢であり、中国は当然、焦りを感じているはずです。

 対中政策においてアメリカが取っている姿勢の根本的変化は、中国共産党と中国人民を明確に分けたことです。中国共産党は決して中国人民の代表ではないということです。

 中国人民は自分たちの代表を選ぶ国政選挙を一度もしたことがないわけですから、今の中国共産党は一体何者かという疑問が出てもおかしくありません。どこにも国民の意思は反映されません。共産党が勝手にいろいろなことを決めて国民に押し付けているだけです。従わなければ、人民武装警察が動きます。逮捕され拘束されます。

 習近平が二つの名称、肩書を持っていることについて考えてみましょう。
 一つが「国家主席」の名称で、もう一つは「総書記」というものです。

 国家主席と言った場合には、14億の民の前に立つ指導者、つまり国民の代表としてその頂点に立っているといったイメージがあります。

 総書記と言った場合には、これは中国共産党のトップであるということです。中国人民には関係なく、あくまでも共産党の中での最高指導者ということになります。

 アメリカはこれまでの「習近平主席」という呼び名をやめました。なぜなら、習近平は中国人民を代表していないからです。彼は中国共産党の最高指導者ですから、「習近平総書記」でいいということです。

 習近平は主席(President)ではなく、総書記(General Secretary)である、このように習近平の立ち位置を定めました。習近平総書記でよろしい。

 アメリカは、習近平を14億人民の代表であるという見方を完全に捨てました。
 これはアメリカの政権の指導者たちが全面的に認識を改め、アメリカが戦うべき相手は中国共産党であり、中国人民ではないとし、その二つの間に線を引いたということを意味します。

 言い換えれば、アメリカは中国共産党を倒すことを決意したのであり、共産党が信奉する共産主義と戦うことを明確にし、中国人民と戦うものではないということです。

 7月23日に、カリフォルニアのニクソン大統領記念図書館で行ったポンぺオ長官の演説を見ると、「われわれは、両国間の根本的な政治的イデオロギーの違いをもはや無視することはできない」「自由世界が共産主義の中国を変えなければ、中国がわれわれを変えるだろう」「中国人は活力に溢れ、自由を愛する民族だ。中国国民は中国共産党と全く違う」と語っており、その趣旨は明確です。

 共産主義の中国を変えなければ、中国がわれわれを変えるという危機感を表明しています。
 打倒すべきは中国共産党、中国共産主義であると、その戦いの目標を闡明(せんめい)にした背景が習近平「総書記」の呼び名に現れたのです。