2020.09.07 17:00
コラム・週刊Blessed Life 132
「安倍首相、お疲れさまでした」
新海 一朗(コラムニスト)
安部首相、本当にお疲れさまでした。
歴代首相の通算在職日数において、第1位であった桂太郎首相の2886日を超える3200日の日数で、在職を離れることを表明された安倍晋三首相ですが、「本当にお疲れさまでした」と心から申し上げたいと思います。
9月2、3日に行われた朝日新聞社の世論調査では、安倍政権を「評価する」が71%に上ることが分かりました。
これは大変な高評価です。いろいろな批評、批判にさらされることも多かった安倍政権ですが、国民は非常に冷静に安倍政権の仕事ぶりを見ていたということです。
安倍総裁が率いる政権が憲政史上果たし得た快挙は、内政と外交における期待値以上の働きでした。このことを、国民は確かに感じ取り、評価したのです。
まずは、内政面での評価は、「アベノミクス」において見られました。景気の回復をなかなか実感できないなどの声も聞かれましたが、全体的には、それまでの、「失われた20年」「デフレスパイラル」から抜け出せない日本経済を上昇気流の中に導き入れることに成功しました。
外国では、日本もいよいよ国運を失い、一等国から二等国へ転落したようだといったネガティブな見方が定着しつつありましたが、こういうイメージを一気に払拭し、7000~8000円代に低迷していた株式市場に活力の取戻しを計り、2万円代の株価に乗せた功績は大きいと言わなければなりません。
アベノミクスの第一の矢であるデフレ対策としての量的金融緩和政策は、実施されるや否やあっという間に株価の上昇を実現し、陰鬱(いんうつ)な景気低迷の空気はたちまちなくなっていきました。しかしながら、第二の矢である財政政策、第三の矢である成長戦略は思ったほど簡単ではなく、現在も、苦心の取り組みが続いています。
次に、外交面での評価は、何と言っても、日米同盟の強化と深化が進んだということです。
日本は、クリントン政権やオバマ政権など、米国の民主党政権が見せた米中関係の深まりの中で、ややもすると、「ジャパン・パッシング」と言われる辛酸(しんさん)をなめる羽目になりました。
外交的、投資的な魅力ある国家としての重要性が次第に失われ、代わって中国が日本の座を奪い取る状況を見なければならなくなったのです。
しかし状況は一変しました。
2017年以降、共和党トランプ政権の登場は、米国に取って代わろうとする中国の覇権的な野心を見抜き、共産主義中国の軍事力、経済力、戦狼外交の傲慢性をこれ以上許さないという国家政策の180度の転換を図ったのです。
この米国の姿勢とぴったり息を合わせ、トランプ大統領と唯一、相性の良い安倍晋三という他の国には見られない強固な「日米同盟」が誕生することになったと言えます。
アメリカは、すっかり、安倍首相が掲げた構想あるいは戦略に乗りました。
「自由で開かれたインド太平洋構想(戦略)」が、中国の太平洋侵出を封じるものであることは明らかです。
現在、「QUAD枠組み」と言われる、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国の軍事的連携は、今後アジアにおけるNATO的な機能を果たすことになるでしょう。まさに外交面において、安倍首相が示した構想は天啓のようなアイデアです。
健康問題とはいえ、惜しまれながら、辞任の道を選択された安倍首相にもう一度、深謝申し上げます。