コラム・週刊Blessed Life 131
南シナ海に中国のミサイル着弾!

新海 一朗(コラムニスト)

 アメリカと中国は、後戻りできないところまで対立を深め、いよいよ軍事衝突の可能性まで顕在化してきました。8月は米中にとって熱い夏となり、熱戦の危機が高まってきたと言えるでしょう。

 米海軍主催で817日から31日まで、ハワイ周辺海域において実施されている多国間海上演習「環太平洋合同演習(リムパック)」(10カ国参加)に対抗する形で、中国は824日から29日まで南シナ海で軍事演習を行っています。南シナ海だけでなく、東シナ海に近い黄海でも「重大軍事活動」を展開しています。米中は、軍事演習の形で、想定される戦いに備えて、火花を散らしているのです。

 そういう状況下、826日午前、中国は海南島と西沙諸島の間に、4発のミサイルを発射し、海域に着弾させました。発射した基地は二つ、一つは中国奥地の青海省、もう一つは海岸線近くの浙江省です。青海省の基地からは「東風26」を、浙江省からは「東風21D」を発射しました。「東風26」は射程4000kmで、「グアムキラー」と呼ばれています。「東風21D」は射程1500kmで、「空母キラー」と呼ばれています。

 この不意打ちのようなミサイル発射を、米軍は全く知らなかったのでしょうか。

 どうやら、米軍は事前につかんでいたようです。その理由として、北京のシンクタンクによれば、二つの基地からの発射時間帯に米軍の電子偵察機RC135S(通称コブラボール)が南シナ海を飛行していたからです。発射された弾道ミサイルのデータは全て、このコブラールによって収集されたわけです。もちろん着弾状況も確認しました。

 「東風26」と「東風21D」は移動式発射台が使用されるため、発射の兆候をつかみにくいとされますが、それでも米軍は正確に発射の時刻を知り、着弾のタイミングを計っていたと思われます。こうなると、発射から着弾まで、何から何まで米軍は中国軍のミサイル発射を見透かしていたということになり、中国側から見れば、たまったものではありません。不意打ちを食らわせるつもりでも不意打ちにならないのです。

 米国の偵察衛星(スパイ衛星)が鮮明な画像で中国のミサイル基地の様子を把握し、怪しい動きがあれば即座に地上軍にその情報は連結され、すぐに電子偵察機が現場へ飛んで情報を収集します。このような一糸乱れぬ連係プレーは、まさに軍事行動の絶対的基本である「チームプレー」の成果です。

 米軍の空母打撃群(Carrier Strike Group、1隻の空母と艦上機と複数の護衛艦艇で構成される)を、中国は非常に恐れています。ニミッツ、ロナルド・レーガンの2隻の空母を中心とする二つの空母打撃群が南シナ海を徘徊するだけで、大きな圧力を感じるのです。

 今回のミサイル発射は、そういう空母打撃群など恐れてはいないという強がりであるかもしれませんが、中国軍が技術を高めてきていることは無視できず、米国もぬかりなく対応する必要に迫られています。しかし中国軍がどこから、いつ、ミサイルを発射した、どこに着弾したなどの情報を把握する米軍の能力は、やはり世界一の超軍事大国です。