コラム・週刊Blessed Life 134
民主主義と相いれない中国の思考

新海 一朗(コラムニスト)

 米国と衝突している中国は、EU(欧州連合)との関係を深めて、経済回復の突破口をヨーロッパから開きたいと考えています。

 EUと中国の関係は、投資協定の締結を2020年内に結ぶことを目指し、7年前から話し合いを続けてきました。そのためのオンライン会議が914日に行われましたが、年内の投資協定は難しい見通しとなりました。

 オンライン会議は、EU側からミシェルEU大統領(常任議長)、フォンデアライエン欧州委員長、メルケル独首相の3人、中国側から習近平氏の、4人でなされました。

 会議において、欧州の3人の苦言を矢継ぎ早に聞かされた、応戦一方の習近平は、中国としてのやり方を開き直って述べる始末で、投資協定の締結を詰めていくことなど、到底できるものではありませんでした。

 ミシェル議長は、「欧州は貿易相手国であり、貿易を行う遊び場ではない。われわれは公正性を望む」と述べ、貿易・投資において中国は公正な政策を展開していないことに不満を示しました。

 ロイター通信によれば、ドイツのメルケル首相は、中国が市場開放を意味する投資協定を本当に望んでいるのか明言してほしいと、中国に圧力を加えたと報じています。

 習近平にとって厄介なことは、EU側が口をそろえて人権問題に言及したことです。

 香港の住民の安全、新疆ウイグル自治区などの少数民族の待遇に関する懸念が持ち出され、これに対する習近平の答えが、「香港と新疆ウイグル自治区の問題の本質は、中国の国家主権、安全性、統一を保護する問題だ。中国で不安定や分裂を引き起こしたり、中国の内政に干渉したりすることに決然と反対する」という反論でした。

 そして「中国は『人権教師』を受け入れない、二重規範(自国の人権に目を閉じ、相手国の人権を非難)にも反対する」と言い返しました。
 中国は人権問題に関して、みじんも自国の考えと態度を変えません。

 米国が欧州各国にファーウェイの5G機器を使わないように圧力をかけ、EUがファーウェイ排除や中国企業に対する投資制限に動き始めていることに、習近平は警告を発しています。米国の強烈な中国つぶしの中、中国はEUを突破口として戦略を練っているのです。

 しかし情勢は中国に向かい風で、中国が香港の反中国勢力を監視・処罰する「香港国家安全維持法」を通過させると、EU議会は強く批判し、ドイツ・フランスは香港と締結していた犯罪人引き渡し協定を破棄しました。

 EUは中国を念頭に置いて617日、本国から補助金を受けているような外国企業に対しては罰金を科すとし、買収・合併、公共入札への参加を制限することができるという計画を発表しています。

 これは明らかに中国政府からの補助金で、経済戦略を進めてきた中国企業の違法なやり方を牽制したものです。

 このコロナ禍の下、中国とEUは想像以上の確執を続けているのです。もちろん中国発のコロナの大災害に対する中国の責任と誠実さの欠如が見られることへの不満もあることでしょう。

 欧州の小さな国家であるチェコが、決然と中国と袂(たもと)を分かち、台湾と手を結んだ行為に対して、欧州各国は惜しみない拍手を送っています。気持ちの上で、中国とは付き合いきれないという率直な反中感情が欧州に広がっていると見てよいでしょう。