家族の絆づくり 132
コミュニケーションの土台となる心掛け

ナビゲーター:阿部 美樹

「誠実であり、対等である」という心掛け
 前回に続いて「アサーション」という「自分と相手を大切にする表現技法」に対して考えてみたいと思います。

 アサーションとは、相手に自分の意見を押し付けるというものではありません。反対に、自分の意見を押し殺して相手の意見を受け入れるのでもありません。
 自分のことも、相手のことも大切にするというバランスの取れた理想的なコミュニケーションを実現するための表現技法がアサーションです。

 大切なことは、アサーションの考え方の土台となる前提を常に意識することです。コミュニケーションがうまくいかないとき、今一度、この前提に立ち返って判断してみましょう。

 考え方の前提としての「四つの心掛け」を紹介します。

 アサーションの心掛けの一つ目は、「誠実であること」です。

 自分の感情に正直であることが大切です。
 周りの人にどう思われるかが気になる人は、周りの人の気持ちに神経を使ったり、配慮したりする代わりに、自分の感情に対する正直さを失い、感情に蓋をする傾向があります。自分に嘘をつかず、本当の気持ちを認めることは必要なことです。その一方で、相手の気持ちに対しても自分と同じように扱う必要があります。

 アサーションの心掛けの二つ目は、「対等であること」です。

 自分も相手も、等しく人間としての尊厳性を持っています。
 相手が年上であっても、年下であっても。家族であっても、友人で会っても。相手によって態度を変えることなく、誰にでも同じように接することが必要です。自分と相手とを同時に尊重することが基本です。

「率直であり、自己責任である」という心掛け
 アサーションの心掛けの三つ目は、「率直であること」です。

 率直であるために、自分と相手の両方を大切にすることをベースに考えます。自分の感情に正直であっても、相手の感情を尊重しないというのではいけません。相手の感情を尊重しつつ、自分の主張を率直に言うことが求められます。

 アサーションの心掛けの四つ目は、「自己責任」です。

 自分の意見を率直に言ったところ、自分が望んでいなかった反応が返ってくる場合があります。
 その結果に対して、自分が発言した結果だと受け入れる必要があります。どのような結果に対しても自己責任で捉える姿勢です。だからといって、自分が悪かったと過度に自分を責める必要はありません。
 なぜなら、相手が受け入れるか拒否するかは、相手の判断であって自分でコントロールできる領域ではないからです。自分と他人の領域を分けて考えます。そして、どんな結果になったとしても、自分の気持ちも相手の気持ちも尊重することが大切です。