家族の絆づくり 131
コミュニケーションの三つのタイプ

ナビゲーター:阿部 美樹

(前号の続きとなります。前号も併せてお読みください)

コミュニケーションもトレーニングが必要
 「アサーション」とは、英語で「自己主張」という意味です。相手の考えを尊重しながら、対等に自己主張をしていくコミュニケーションスキルです。

 現在、コミュニケーションスキルを高めるために、「アサーション研修」が教育現場、企業研修などで行われています。

 教育現場では「いじめ」が問題となっているため、相手も自分も尊重する意味でアサーションの研究が盛んです。

 企業では、パワハラ、セクハラへの対処、職場鬱や、高圧的な上司の態度の抑制などにとても効果を発揮します。

 もちろん職場だけではなく友人、親子、夫婦、ご近所付き合いなどの身近な所でもアサーションを生かすことができます。アサーションはとても普遍的なコミュニケーション・スキルであると言えます。

 アサーション・トレーニングの開発者の一人であるアメリカの心理学者ウォルピ(Wolpe,J.)は、自己表現のタイプには三つのタイプがあると主張しています。

 自分はどのようなタイプであり相手はどのようなタイプなのかを知ることは、関係性を円滑にするためには必要なことです。三つのタイプについて解説をします。

理想的な「アサーティブなタイプ」
 第1は、「攻撃的タイプ」です。
 このタイプは、相手よりも自分の意見を優先するタイプです。

 自分の主張をはっきりと伝えるが、相手の気持ちを無視したり主張を押し付けたりする言動をします。

 このタイプは、勝ち負けで物事を決めたり相手より優位に立とうとしたりする傾向があります。
 心の中で、「自分は一番」「あなたは駄目」といった気持ちが根底にあることでしょう。

 攻撃的タイプは、「口調(くちょう)がキツイ」とか「大声で怒鳴る」こともありますが、自分勝手な行動をして相手を振り回したりするなど、巧妙に相手を操作しようとすることもあります。

 第2は、「非主張的タイプ」です。
 このタイプは、自分よりも相手を優先するタイプです。

 自分の気持ちや意見を表現しなかったり表現したくても表現したりするのが苦手なタイプです。

 自分の意見を口にしないだけではなく、あいまいな言い方や回りくどい言い方、または言い訳がましいこともあります。

 このタイプは、「どうせ言っても分かってもらえない」「自分はやっぱり駄目だ」という気持ちがあります。また相手に対して「あなたの言うとおりにしてあげたのに、あなたは私のことを分かってくれない」といった不満や憤りの思いが残りがちです。

 第3は、「アサーティブなタイプ」です。
 このタイプは、相手も自分もどちらも大切にするタイプです。

 自分の気持ちを正直に、率直に、その場にふさわしい表現方法で表すことができるタイプです。

 そして同じように意見を話すことを人にも勧めることができます。またその結果として意見が合わなかったり、ぶつかったりすることもあると知っています。

 意見がぶつかったときは、お互いに意見を出し合ってお互いに譲ったり譲られたりしながら双方にとって納得のいく結論を出そうとします。

 コミュニケーションを円滑にして、双方が納得する結果を生み出そうとする、最も理想的なタイプです。