夫婦愛を育む 115
「のぞみはありませんが ひかりはあります」

ナビゲーター:橘 幸世

 二世帯同居している義母がマスクを作ってくれました。体操教室も編み物教室も休みとなり、医者に通うのも控え(薬だけ家族がもらいに行っています)、友人とのお茶も控えている義母は、文字どおり「STAY HOME」。周りが万が一を心配しているので、ちょっとした買い物すら行っていません。

 そんな中、4月に地域で開かれたマスクの作り方教室から型紙をもらってきてマスク作りを始めました。最初は自分用に、やがてコツをつかんで私たちにも作ってくれました(甘えるばかりの嫁です^^;)。

 喜び感謝する私たちの姿に義母はさらに張り切って、遠方に住む孫のためにも作り続けます。「無理しないでほどほどにしてくださいね」と言うと、「することができて、張り合いができて良かったよ」と答えて、ミシンを踏みます。

 やはり、やる事があって人に喜んでもらえることが力の源なんだなぁと、そんな義母を見て改めて感じます。
 不自由な環境の中でも喜べることを見つけることは、元気に過ごす上でマスト事項かもしれません。

 先日、NHK『ブラタモリ』で「のぞみはありませんが ひかりはあります」という言葉がお寺の掲示板にあった、という話をしていました。

 出所は心理学者の故河合隼雄氏の実体験だそうです。

 自殺したいという相談者からの電話を夜遅く受け、彼の所に駆け付けようと新幹線の切符売り場に行った時、「のぞみはもうありません」と駅員さんに言われて、一瞬愕然(がくぜん)としました。直後に「のぞみはありませんが、ひかりはあります」という言葉が発せられます。

 なんと素晴らしい言葉だと氏は感激したそうです。氏が置かれた状況と心理学者なればこその気付きかもしれませんが、それが今やさまざまな媒体を通じて、多くの人への励ましとなっています。

 仏教的に解釈すると、たとえ人生に望みがなくなったとしても仏様の光は届いています、という意味のようです。

 このコロナ禍の中で、希望を失っている人は少なくないかもしれません。営業自粛に追い込まれ倒産の危機だ、手塩にかけて作った農産物の引き取り手がなく廃棄するしかない、バイトができず大学を続けられないかもしれない等々、不安しかない人も多いでしょう。そんな中、官民問わず、さまざまな形で支援の工夫がなされています。新たな流通ルートを提案したり、一日一食で過ごしている学生や困窮家庭に食料を届けるフードバンクの活動もあります。

 そんな活動は、まさに光です。人間の素晴らしさ、光を見て(可能であれば自分も光の一つとなって)、その背後に天の父母様の愛と導きがあることを思って、この混沌期を皆で越えていけたらと願います。