家族の絆づくり 115
「現状」と「可能性」を見いだす会話

ナビゲーター:阿部 美樹

目標に向かう「現在」という出発点
 願いをかなえるためにも、悩みを解決するためにも、「目標の明確化」が大切です。

 最初にゴールを明確にすることによって視点の変化が生まれます。「現在から未来を見つめる視点」から「未来から現在を見つめる視点」を持つようになり、目指す方向性が明らかになると同時に「未来志向」になります。

 荒波の中に小舟に乗ると船酔いしやすい人でも、遠い地平線を見つめていると不思議にも船酔いしないという話があります。このことは、「未来の目標を定めると目先の変化に振り回されない」ということにも通じます。

 このように、目標を明確にした後は、「現状と問題点の把握」が必要です。目標達成へのスタート地点である「現在」をよく知らなければ、出発することができないからです。

 現状を正しく把握するためには、相手の話に耳を傾けてあげる対話が必要です。質問を通して、客観的な事実とそれを相手がどのように思っているかの両方をはっきりさせていきます。客観的な事実だけ把握しても、人それぞれ捉え方や感じ方は違うので、それをどのように思ったかを引き出します。

 例えば、次のような質問で引き出してみましょう。

 「現在の状況を説明してくれませんか?」「今、気になっている点は何ですか?」「それをどのように思っていますか?」「それは、具体的にはどういうことですか?」「他にはありますか?」このような質問を相手に投げ掛けながら尋ねていきます。すると、相手は自分の口で情報や気持ちを表現する中で、心が整理されていきます。

 さらに、「その状態をどれくらい満足していますか?」「満足した状態が10点満点だとしたら、今は何点でしょうか?」と数字を活用することも有効です。
 「10点には〇点足りませんが、どうしてですか?」と尋ねるなど、いろんな角度から質問していく中で、現在の心の立ち位置が明らかになります。

可能性を信じて探す会話
 現状と問題点の把握をした後は、「可能性を探す」ことが必要です。

 「どうしたらいいと思いますか?」「過去に似たような経験はありますか?」「この事に詳しい人はいませんか?」「あなたの得意なものは何ですか?」「何があったら、一番助かりますか?」「時間をつくり出すにはどうしたらいいと思いますか?」など、可能性を引き出す質問をすると、味方や協助者を発見したり、前向きなアイデアが出てきたりします。

 しかし通常の会話では、このような質問をすることはなかなかできません。相手に尋ねるどころか、「こうしたらいいよ!」「こうあるべきじゃないの!」と自分なりの価値観と経験に基づいてアドバイスすることでしょう。

 大切なことは本人が答えを出すことです。相手をできる人と信じる心があってこそ、相手に尋ね続けることができます。