家族の絆づくり 113
相手の責任感や主人意識を育む会話

ナビゲーター:阿部 美樹

聞きながら別の事を考える癖

 会話上手は「聞き上手」といいますが、会話において聞き続けることは簡単なことではありません。

 相手の話を聞きながら、実は別の事を考えていることはありませんか?

 「用事があるんだから、早く終わらないかな」「夕飯のおかずは何にしようか?」「あっ、そういえば思い出した…」と、表面的には傾聴しているように見えても別の事に思い巡らすことがあるかもしれません。

 また、相手の話を聞きながら、「その考えは間違っているんじゃない」「それぐらい、どうしてできないんだろう?」と、相手を評価しながら聞くこともあります。

 「私だったらこうするのに」「もっと良いアイデアがあるでしょう」と、別の意見に思いを巡らすこともあるでしょう。

 しかし別の事を考えている間は相手の話を集中して聞いていないということであり、傾聴ではありません。

 傾聴は、よく聞いて「アドバイスする」のではありません。アドバイスするよりも「共感して寄り添う」という姿勢が必要です。

 ですから、相手に対する評価や採点・分析する必要はありません。さらに効果的な解決策などのコメントも要りません。人生の主人公は相手自身であり、相手の中に答えがあるからです。

「指示命令」よりも「提案」

 人生経験が豊かな人や知識の多い人は、アドバイスしたがる傾向にありますが、そのような「物差しを捨てる」ことができる人こそ、本物の傾聴する人といえます。

 アドバイスよりも必要なものは「質問」です。事実や事情を知る質問、相手の気持ちや意志・意見を聞く質問、問題に対する解決策に関する質問など、相手の中から答えを引き出すことが必要です。

 その質問に対して、相手が「沈黙」する場合もあります。その沈黙に我慢できず、次の言葉を催促したり、結論的なアドバイスをしてしまうことがあります。

 沈黙に対しても、せかさずに、相手の表情や態度を見守りながら待つ姿勢を持てる人ほど聞き上手な人といえます。

 相手が沈黙していたとしても、自分の意見、気持ちや情報を頭の中で整理したり、記憶をたどっているのかもしれませんし、それらを表す言葉を探しているのかもしれません。言葉にならない思いを味わっているのかもしれません。

 沈黙にもそれぞれに意味があります。もし相手がどうしたらよいか分からず迷っている場合は、指示命令型のアドバイスではなく、提案型のアドバイスをすることが有効です。

 「~と思いますけれども、いかがですか?」「~する方法もありますが、いかがですか?」など、あくまでも相手が判断するように導くことが有効です。人生に対する責任感や主人意識が高まるからです。