家族の絆づくり 110
会話上手は「質問と確認」上手

ナビゲーター:阿部 美樹

前向きな心に導く質問

 「〇〇をどうしたらいいでしょうか?」と相談した時、「あなたはどう思いますか?」と逆に質問されたら、どのように反応しますか?

 とっさの反応として、「どうしたらいいのかな…」と考え始めることでしょう。適切な質問は、考えるきっかけや前向きな心に導き、人生に対する責任意識を高めてくれます。

 ある悩みで途方に暮れていたとしても、「この問題は、何をしたら良い方向に向かうと思いますか?」と尋ねられると、「良い方向に向かうこと」を前提として考え始め、希望が湧いてきます。

 「もしできるとしたら…」「良い結果が現れるとしたら…」というように、幸せな結果をイメージした質問は、相手の意識を変えてしまうほどのパワーが秘められているようです。

 また、「このような事例もありましたが、あなたはどのように思いますか?」と尋ねられたら、その事例に対して「なるほど、そうか…」と、新たな気付きや新鮮な発想転換につながることがあります。

 「このような事例のようにやるべきですよ」と断定的に教えたり、指示したりする方が合理的であり、手っ取り早く感じます。しかし受け手は当事者意識が弱く、実感を持って理解することができず、頭で理解しても行動できない場合が多いものです。

可能性を高める質問

 また、「具体的にはどういうことですか?」と尋ねれば、曖昧だった物事が具体化されます。

 「何が」「いつから」「どこで」「どのように」「どんな」…と、情報を収集して意味を明確にしていくと、ものごとの核心部分がはっきりします。

 なお、「なぜ、できなかったのですか?」「なぜ、そのような行動をしたのですか?」というように、「なぜ?」と聞かれると、受け手は本能的に言い訳を考えてしまう傾向があります。

 声のトーンや口調によっては、「問われた」というよりも、「叱られた」という印象を受けることもあります。反省を促されたという否定的なニュアンスを感じやすいからです。

 「なぜ?」という原因や理由を深めることよりも、「何が?」「どのように?」と選択の幅を広げ、可能性を高める質問の方が、相手の成長を促すようになります。

 さらに、質問によって情報が明確に把握できたとしても、話し手が伝えたかったことと、聞き手が受け取った内容が一致しているかを「確認」しておくことも大切です。

 「あなたが伝えてくれたことを、私は〇〇と受け取りましたが、それで合っていますか?」というように、思いやりを持って確認することです。

 このように、「質問と確認」を大切にする人ほど、会話上手といえます。