家族の絆づくり 106
「奇跡の保育園」から学ぶ自主性の大切さ

ナビゲーター:阿部 美樹

「ほったらかし教育」こそ、子供が伸びる?

 栃木県足利市に、「奇跡の保育園」と呼ばれる0歳から5歳の子供を100人ほど預かる認可保育園「小俣幼児生活団」があります。

 奇跡と呼ばれるゆえんは、細かいルールを一切設けず、子供たちの自主性に任せていても、驚くほど自立した子に育つからです。

 「自由と責任」を保育目標に掲げ、自由に自分の頭で考える力、それを行動に移す力、そしてその結果に責任を持つ力を身に付けることを目指します。

 「栄養を取らなければいけないので、給食は残さず食べさせるべき」「成長のためにお昼寝をさせなければならない」と、保育士は知識があるゆえに、「ねばならぬ」「べき」といった固定観念に囚(とら)われていたことに気付き改革し続けてきました。

 お弁当や決まった量の給食が出る園が多い中、ここでは2歳児以降は自分で食べたいものを食べたいだけ取るバイキング形式の昼食です。
 自分のことは自分で決めて、それに責任を持つ力を身に付けさせるためです。

 取り過ぎて食べきれない子には、「今日の量はちょっと多過ぎたね」「こんなに取ると他の子の分がなくなっちゃわないかな?」などと声を掛けて、子供たちに考えさせる習慣を付けていきます。1歳頃から「おしぼり、どっちがいい?」「牛乳と麦茶どっちがいい?」と尋ねて「選ぶ」練習をしています。


写真はイメージです

「自主性」を促す関わり方

 また、子供に対して「何々しなさい」「何々しては駄目」と命令したり怒鳴ったりすることは一切ありません。

 「何々してもらえませんか?」と大人に対するのと同じように「お願い形式」で子供たちに対話を重ねます。もし、子供がいけないことをした時、危険な時はしっかりとその旨を伝えていますが、「私はそれをされたら嫌だな」「私は危ないと思うよ」と、主語を自分にした「私言葉」で教えます。そうすれば、命令言葉や要求言葉にならないからです。

 この保育園は、クラスみんなで一緒に行動する一斉保育の時間は設けないという「自由保育」が特徴です。子供たちは「今、これをやりたい」という敏感期があり、それを遮るよりも、満足いくまでやらせてあげるほうがその子の能力が自然に伸びていくと考えています。

 原理講論には「自主性」の大切さについて次のように説明されています。

 「創造原理によれば、人間は、神も干渉できない人間自身の責任分担を、自由意志によって完遂することにより初めて完成されるように創造されたので、人間は本性的に自由を追求するようになる。また、人間は、自由意志によって自分の責任分担を完遂し、神と一体となって個性を完成することにより、人格の絶対的な自主性をもつように創造された」(『原理講論』p.515

 子供の自主性を促す指導法ほど、責任を果たす能力を高めるものではないでしょうか。