家族の絆づくり 103
摂食障害からみた生きづらさの克服

ナビゲーター:阿部 美樹

「~しなければならない」という生きづらさ

 「摂食障害」という病気があります。
 食べようとしても食べられなくなる「拒食」、食欲と無関係に食べ過ぎてしまう「過食」、食べたものを意識的に吐き出してしまう「過食嘔吐」、さらには「下剤乱用」「偏食」など、その症状は多岐にわたります。

 摂食障害に悩む人は自己肯定感が低く、ありのままの自分を肯定できない場合があります。 
 「~しなければならない」という価値観を変えることができず、苦しんでいます。

 例えば、「もっと頑張らないといけない」「これくらいのことはできないといけない」「親の期待に応えないといけない」など、完璧主義で狭い価値観にがんじがらめになり、その生き方に限界が来た時に摂食障害という形で体がSOSを発してくるものです。

 自分を傷つけるほど食べ物を詰め込んだり、骨と皮になるまでガリガリに痩せてしまったりというのは、心が助けを求めているからです。

 「食べること、太ることが怖い」「何を食べたらよいか分からない」といった囚(とら)われは、「生きていくのが怖い」「どう生きたらよいのか分からない」という生きづらさの象徴です。

感情や行動を評価せず承認する

 このような症状の背景にあるものは何であり、どうしたらよいのでしょうか。

 摂食障害は、症状だけを改善しても根本的な価値観や考え方が変わらない限り、再発したり、アルコール・買い物依存など、他の依存症に移行してしまったりする場合があります。

 摂食障害は、自己肯定感や自尊心の欠如、孤独感、人間関係や生き方にこそ問題がある場合が多いものです。

 ですから、周りの家族は症状を否定するのではなく、一旦認めて受け容れることが大切です。

 摂食障害に対して率直に話しをすること、人間関係での悩みや不安を吐露することができる場が必要です。

 摂食障害の自助グループで、定期的に集まり自分の思いを語り合うミーティングを持つ場合もあります。
 お互いに感想や意見は言わず黙って聴き、話し手はただその場で自分の胸の内を「手放す」ように語ります。

 まさに、人の感情や行動を評価や要求せず「承認」することこそ、生きづらさを克服する秘訣なのです。