家族の絆づくり 102
人の上に立つと「教えたがり病」にかかりやすい

ナビゲーター:阿部 美樹

「学力日本一の村」の教育は教え方が違った!

 子供ができて親になったとき、部下ができて上司になったとき、先輩になって後輩ができたとき、相談を受けてアドバイスを求められたときなど、「教えよう」とします。

 「教育」とは「教え育む」と書くように、「教えないと育たない」「教えないと指導したといえない」と考えがちです。ですから、人の上に立つと「教えたがり病」にかかりやすいものです。しかし、教えることは本当に教育につながるのでしょうか? 教え過ぎることで相手をダメにしていないでしょうか?

 文部科学省が実施している全国学力テストで、毎年トップクラスの成績を収め「学力日本一の村」として注目を浴びている地域があります。「秋田県東成瀬村」という人口2500人余りで県内でも2番目に小さな村です。

 「地域づくりは人づくり、人づくりは教育」という考え方で、村の予算の約1割は教育に当てられています。

 この村では、指導法を研究し続ける中でたどり着いた、独自の「探求型授業」があります。先生が一方的に話し続ける内容を黙々とノートに取るという受け身の授業ではなく、子供たちが課題について自分で考え、答えを導き出すことに重きを置きます。授業ごとに設けられた課題を皆で議論しながら理解していく仕組みです。

 また、家庭で自学自習を行うための「自学ノート」があり、各自が何をどのように取り組むかを決め、学習の最後にはその日の勉強を振り返ります。自分で意識することで、自分の弱点を知り、克服することができます。担任の先生は毎日その「自学ノート」を確認し、それぞれの学習に応じたコメントをして返却してサポートします。

「教える」よりも「尋ねる」

 このように、教えられるよりも自分で答えを探す方が「成長」につながるようです。

 学校の勉強だけでなく、人生の課題や問題を解決する上で、解決策を誰かに教えてもらうよりも自分で探し出した方が、心から納得した答えを得ることができます。
 そのためには、親は子供に対して、先輩は後輩に対して、上司は部下に対して、「答えを教える」よりも「答えを尋ねる」ようにすべきです。答えを見いだせるように「承認と質問」を繰り返すことです。

 上に立つ人は、自分の経験や知識に基づいて「教えたがり病」にかかりやすい傾向があります。無意識に「教えてあげた」という満足感を求めるからです。
 指導者の満足ではなく、相手が満足することが大切なのです。

 本当の満足を得るのは、教えられた時ではなく、自分で見いだした時です。人生の主人公は、「本人」だからです。