家族の絆づくり 101
真の愛を実践するとは「承認し続ける」こと

ナビゲーター:阿部 美樹

「腑に落ちる」とはどんな時?

 「頭では分かるけど心が動かない」「決意したのに行動が伴わない」「分かっているけど覚悟ができない」という経験をすることがありますが、これは「腑(ふ)に落ちていない」ということです。

 「腑」とは、五臓六腑の「腑」であり、内臓のことです。また、心、心根という意味もあります。「腑に落ちる」とは、心に落ちること、しっくりはまることを意味します。

 それでは、腑に落ちるためには、何が大切でしょうか。

 「~をやるべきだ」「~をやらなければならない」「~をやる使命がある」という義務感や使命感だけでは、なかなか腑に落ちません。
 腑に落ちるためには「愛する・愛される」という心情的動機が必要です。まさに、「変わらない愛」「永遠の愛」「無償の愛」「為に生きる愛」という「真の愛」に触れた時に人は誰もが心の底から納得するようになります。

 そのような真の愛で接する姿勢こそ、「承認する」「共感する」ことです。
 相手が善なる状態でも、悪なる状態でも承認して受け入れてみましょう。環境が願う状況になったとしても、ならなかったとしても、承認して受け入れてみましょう。自分の心が平安で心地よい状態でも、葛藤するような苦しい状態でも承認して受け入れてみましょう。
 全ての出来事は、肯定的な価値があるはずです。

「正そう!」より「承認する!」

 例えば、「自信がなく前に進めない」という状況の時に、本人も周りの人も「自信を持って前に進むべき」と考えます。しかし、「前に進めない」ことを否定しないで「承認」してみましょう。本人が「前に進みたい」のか、「立ち止まりたい」のか、それとも「後退したいのか」を尊重して聞いてみるのです。

 周りから「前に進むべき」という無言の圧力を受けるだけでつらくなる人もいます。
 反対に、「後退したかったら後退してもいいですよ」と承認された瞬間、「えっ! 後退してもいいの?」という驚きとともに、心のわだかまりが解かれ、本当の心と出会います。
 前に進めないことにも意味と価値を見いだした時、「よし、やりたい!」という思いが湧いてきます。まさに、その瞬間が「腑に落ちた」状況です。否定するのではなく、肯定的に承認してみましょう。

 「承認を続ける」ことを通じて、相手は「真の愛」を感じるようになります。
 相手に対して「正そう! 教えよう! 気付かせよう!」とするよりも、「承認する! 共感する! 受け入れる!」という姿勢こそ、真の愛を体現した姿なのです。