家族の絆づくり 96
人間力を鍛える秘訣

ナビゲーター:阿部 美樹

人生には何一つ無駄がない

 プロ野球選手として通算400本塁打・2000本安打を達成し、侍ジャパン(前)代表監督にもなった小久保裕紀氏のエピソードを紹介します。

 選手時代のオールスターの試合前、イチロー選手と二人で外野をランニング中に、小久保氏はイチロー選手に「モチベーションって下がらないの?」と質問したそうです。

 するとイチロー選手は「小久保さんは数字を残すためだけに野球をやっているんですか?」と反応。
 「まぁ、残さないとレギュラーを奪われるし…」と小久保選手が答えると、イチロー選手は「僕は心の中に磨き上げたい『石』がある。それを、野球を通じて輝かせたい」と言ったそうです。

 その衝撃的な言葉は、小久保氏が野球を通して「人間力を鍛えるというスイッチ」が入った、忘れられない言葉となりました。

 また、調子のいい時に限ってけがをしたり、デッドボールで骨折したりすることが何度もありました。しかし、けがや骨折であっても、それが自分にとって必然・必要であり、ベストなんだと受け入れることによって、後ろ向きに捉えがちなリハビリでも前向きに打ち込むことができました。

 まさに、「人生には何一つ無駄がない」という姿勢が心の軸となり、逆境を乗り越え幸運を呼び込む力となったのです。

自分との約束を守り、やり続ける

 小久保氏の最大のライバルは、「過去の自分」でした。
 これまでの野球人生を振り返り、誇れることがあるとすれば、「自分との約束を守り続けてきた」ということです。

 誰かが見ているかどうかは関係なく、自分が決めたことは確実にやる。中学時代は練習から帰って来たら必ずランニングをする、練習がない日も素振りをする。プロに入ってからは、空いている時間は本を読む、写経、座禅、瞑想を試合会場へ行く前にやった年もあります。その中身は立場や年代によって変わってきますが、自分との約束を裏切らないという一点は貫き通してきました。

 自分との約束を愚直に守り続けることが人間力の向上につながっていきます。
 そして「まずやってみる」ということ。本を読んだり、人の話を聞いたりした時に、「自分には必要ない」「自分にはできない」と切り捨ててしまう人が多いのですが、いろいろ考える前に、まず行動することが大切なのです。