家族の絆づくり 95
常勝の帝京大学ラグビー監督の意外な心掛け

ナビゲーター:阿部 美樹

「勝ちたい!」よりも「幸せにしてやりたい!」

 全国大学ラグビー選手権で前人未到の九連覇、関東大学対抗戦八連覇を果たした帝京大学ラグビー部の岩出雅之監督は、次のように語っています。

 「『勝ちたい』と思っていた時は勝てなくて、『勝たせたいな』と思っていると少しずつ勝てるようになって、『幸せにしてやりたい』と思うようになって、一気に優勝が続きました。桶の中の水を自分の方に寄せようとすると向うへ逃げてしまうけれども、相手にあげようと押してやれば逆に自分の方へと返ってくるのと同じで、自分のためではなくて相手のために一生懸命やると、物事はうまく進んでいくのではないかと思います」

 スポーツという勝負の世界でも「相手の幸せのために」という愛の動機は、最高のパフォーマンスを引き出すようです。

 また、岩出監督は今までのさまざまな人との出会いやご縁が与えられたことはうれしいし、感謝の心でいっぱいですと表現、「ついている! うれしい! ありがとう!」という言葉を大切にしているようです。

リーダーシップの土台がオーナーシップ

 岩出監督は「リーダーシップを身に付ける前にまずはオーナーシップをとことん鍛えることから始めます」と、自主性を育てることがリーダーシップの土台であると強調されます。

 「上級生が下級生を支援し、彼らをその気にさせる『サーバントリーダーシップ』が求められている。スタッフが学生たちに簡単に答えを教えずに、学生たちに考えさせるのと一緒で、上級生も下級生に教え過ぎないで考えさせていく。そのために上級生が下級生をよく観察し、言いたいことがあったらそれを一気に伝えるのではなく、質問形式にして相手に答えさせる。そうやって面倒を見ていくことで、自分もまた成長できるのです」

 また、スポーツの世界では先輩後輩の上下関係が厳格で、命令と指示が当然とよく聞きますが、このラグビー部では、上級生が掃除や食事当番の雑用まで、「下級生への伴走」を積極的に行っています。

 互いに信じ尊重し合う人間関係づくりが、強いチームをつくっているのです。