2019.12.14 12:00
スマホで立ち読み Vol.2〈最終回〉
『よくわかる勝共理論』(14)
神に反発し、復讐を誓う
「ほぼ5勝共」でおなじみの中村学氏の『よくわかる勝共理論~日本と世界の平和のために』。混迷する時代の今だからこそ、しっかりと読んでおきたい一冊。
すでに読んだよというかたも、まだ読んだことがない、知らなかったというかたも、みんな立ち読みオーケーです。
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中村 学・著
第二章
マルクスの動機
神に反発し、復讐を誓う
マルクスは十九歳のとき、「絶望者の祈り」という詩を書きました。これを読むと、彼の核心的な部分が見えてきます。少し長いですが、全文を紹介しましょう。
「神が俺に、運命の呪いと軛(くびき)だけを残して
何から何まで取り上げて、
神の世界はみんな、みんな、なくなっても、
まだ一つだけ残っている、それは復讐だ!
俺は自分自身に向かって堂々と復讐したい。
高いところに君臨してゐ(い)るあの者に復讐したい、
俺の力が、弱さのつぎはぎ細工であるにしろ、
俺の善そのものが報いられないにしろ、それが何だ!
一つの国を俺は樹(た)てたいんだ、
その頂きは冷たくて巨大だ
その砦(とりで)は超人的なもの凄さだ、
その指揮官は陰鬱(いんうつ)な苦悩だ!
健やかな目で下を見下ろす人間は
死人のように蒼(あお)ざめて黙って後ずさりをするがいい、
盲目な死の息につかまれて
墓は自分の幸福を、自分で埋葬するがいい。
高い、氷の家から
至高者の電光がつんざき出て
俺の壁や部屋を砕いても
懲りずに、頑張って又立て直すんだ」
(改造社版『マルクス・エンゲルス全集』第二十六巻)
マルクスはかつて詩人を目指していました。ですから内容がストレートに伝わらないよう、わざと情緒的な表現を使うことがよくありました。これを日本語に訳すとさらに解読が難しくなります。この詩もそうした面があると思いますが、あえて私なりに最初の段落を解釈すると、次のようになると思います。
神が俺に与えた人生は、呪われた運命でしかなかった
楽しいこと、うれしいことは何もなかった
温かい家族、心の通じ合う友人、そして恋人
すべてが取り上げられた
俺は神が許せない
神の世界はみんな、みんな、なくしてやる
みんな、みんな、破壊してやる
しかしその願いが実現しても、俺はまだ満足しない
ある思いが絶対に消えずに残る
それは神への復讐だ!
神への復讐を果たすまで、俺は絶対に諦めない
俺は自分自身に向かって誓う
堂々と神に復讐する
こうしてマルクスは、自らの人生を神の復讐にかけると決心しました。共産主義は神の存在を否定する思想ですが、彼は決して「神は存在しない」とは思っていなかったのです。むしろ生涯をかけて復讐したいと思うほどに、神をリアルに信じていました。そして彼の思想が広がったことで、世界では神を否定する人が増えました。日本でもそうです。なんとも皮肉な話です。
〔第二章のポイント〕
●マルクスは不遇な人生の中で、神と社会を強烈に怨むようになった。
●マルクスが怨みを動機として書いたのが共産主義である。
●マルクスの目的は、暴力革命の正当化にあった。
●共産主義は神を否定する思想だが、マルクスは神を信じていた。
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「スマホで立ち読み」での連載は、今回が最終回となります。ご愛読ありがとうございます。続きは、ぜひ書籍でご覧ください。