青少年事情と教育を考える 86
いじめをなくすためには

ナビゲーター:中田 孝誠

 文部科学省から、昨年度のいじめの件数が公表されました。

 全国の小中高校と特別支援学校で確認されたいじめの認知件数(学校が把握した件数)は543933件。前年度(414378件)から約13万件増え、いじめを認知した学校数は全体の80%に当たる3万49校です。

 いじめの定義が、被害に遭った子供が精神的苦痛を感じているかどうか子供の立場に立って判断することになったこともあり、この2年間で一気に22万件余り増加しています。
 もちろん、学校現場から報告される統計が正確なのか疑問視する向きもありますが、いじめが多くの学校で起きているのは事実です。

 いじめを減らす、あるいはなくすために、どのような対応ができるでしょうか。

 現在は、スクールカウンセラー、スクールロイヤーの活用、教員全員で子供に対応する全員担任制・複数担任制の導入を検討する自治体などがあります。

 一方、予防という点から見ると、いじめ防止は傍観者が鍵を握っているとして、何をすればよいか分からない傍観者に対して、集団で対抗すること、それによって雰囲気を良くし、いじめの発生を抑制できることを教えることが大切だという指摘もあります(『学校をかえるいじめの科学』和久田学著)。

 また、近藤卓氏(日本ウエルネススポーツ大学教授)は、相対的に優位な者が自分より劣位な者をいじめるのは、それによって自尊感情を高めようとしているからだといいます。

 ですから、いじめを根絶する、つまり「いじめる者をなくす」ためには、親が無条件の愛で子供を愛する。その愛を確信した子供は親から「人を傷つけてはならない」と言われれば、それを犯すことはできず、いじめる者にはならないと指摘しています。

 家族関係を中心とした力が、いじめの問題においても重視すべき点になるわけです。