青少年事情と教育を考える 87
教師間のいじめが子供のいじめを増やす

ナビゲーター:中田 孝誠

 神戸市の小学校で起きた若い教員に対するいじめが大きな問題になっています。
 今回の件は、いじめた側の教師たちの人間性が問われる異常な事例です。

 背景には、学校が閉ざされた空間であるため歯止めが利きにくいとか、職員室で立場が固定化され見て見ぬふりの状況になるといった指摘があります。若い教員が増えて指導力が十分でなくなっているといった話も出ています。
 実際、ここまで極端でなくても、学校内の人間関係で悩んでいる教員は少なくありません。

 もう一つ、ここで問題にしたいのは、教師がこのようないじめを引き起こすことで、子供たちに重大な影響を与えることです。

 『学校を変えるいじめの科学』(和久田学著、日本評論社)によると、積極的ではないとしても、教員がいじめを促進してしまうケースがあります。

 例えば、いじめを受けた子供が相談に来た時、教師は自分の経験から「勉強で見返してやれ」などと語ることがあります。しかし、それは「どうすればよいか分からない」から「自分は関与しないよ」という傍観者のメッセージを伝えてしまうというのです。教師が「見て見ぬふり」をすると、学校はいじめが容認される場だと子供たちに伝えてしまう、と和久田氏は指摘しています。

 また、いじめ加害行動リスクを高める因子として「虐待を受けたこと」「友達のいじめ行動の目撃」とともに、「大人のいじめ行動の目撃」があることが過去の研究で明らかになっています。教師間のいじめを受けている教師が担任するクラスほど、いじめが多いという研究もあります。

 和久田氏は、子供の行動を変える前に教師が行動を改善すること(子供の良い行動に注目するなど)、子供に感情コントロールの教育を行って学校風土を改善するプロジェクトを提案しています。

 言い換えると、学校全体に思いやりのある、道徳的な文化を創り上げていくことです。大半の教師は、子供のためにという志を持っています。そして保護者は教師と協力して、地域社会も含めて、そのような学校文化を創り上げていくべき時だと思います。