青少年事情と教育を考える 85
同性婚は子供の福祉を揺るがす

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、萩生田光一文部科学相が、学校でLGBT教育を行うことについて慎重であることを紹介しました。
 今回はその関連で、同性婚について取り上げます。

 同性婚についても報道が相次いでいます。
 一つは、自民党の下村博文選挙対策委員長が、富山市での講演で、憲法改正で議論する項目として「同性婚」を提示したことです。具体的には24条の「両性の合意」を「両者の合意」とするということです。

 二つ目は、同性カップルが第三者の精子や卵子の提供を受けて子供をつくる生殖補助医療を国内の四つの施設が実施していたという岡山大学の調査もニュースです。
 日本産婦人科学会などはこうした生殖補助医療を想定していませんが、子供が欲しくなる同性カップルが少なくないというわけです。

 もう一つ、先月公表された国立社会保障・人口問題研究所の「全国家庭動向調査」の結果です。結婚して配偶者がいる女性(妻)への質問で、「同性婚を法律で認めるべき」という回答は約7割でした。また、「生殖補助医療で子供を持てるようにすべき」は、若い世代では7〜8割が賛成しています。

 こうした同性婚に関する動きで見逃せないのは、結婚観、家族観、そして子供の福祉という視点です。

 一方で、結婚は子供を安定的に産み育てる、あるいは出産と子育てが責任を持ってなされるように社会が承認した制度という見方があります。そのために法的にも守られているわけで、一夫一婦制や夫婦間の貞節も当然だったわけです。現在も多くの一般国民はこうした意識を持っていると思われます。

 それに対して、結婚は当事者たちの幸福のためになされる私的で情緒的な行為だという見方があります。そうなれば愛し合っていれば同性でも構わないし、場合によっては不倫や離婚も自由ということになります。

 家族に関する学界では、どちらかというと後者の考え方が広がっています。
 しかし、同性カップルでも「子供を持つ権利がある」ということであれば、子供の福祉、健全に育つ権利はどうなるのでしょうか。

 親がどちらも父親、または母親であっても、子供には影響はないという意見もあります。しかし、アメリカでは同性カップルに育てられた女性が、子供には父親と母親が必要だと訴えた事例があります。
 フランスでも、同性婚は容認しても、同性カップルが生殖補助医療で子供を持つことに反対する数万人の国民がデモを行っています。
 子供への影響というのも、10年、20年という中・長期的な調査が必要だと指摘されています。

 同性婚、さらに生殖補助医療で子供を持つということは、望んでいる人がいるのであれば認めてあげてもいい、というようなレベルの話ではなく、社会全体に関わる問題なのです。