愛の知恵袋 85
愛する妻の名を呼んであげよう

(APTF『真の家庭』204号[2015年10月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

“カクテルパーティー効果”とは

 あなたは“カクテルパーティー効果”という言葉を聞いたことはありませんか? パーティーのように多くの人達が雑談している時でも、興味のある話や自分の名前などはサッと耳に入ってくるというのです。これは“音声の選択的聴取”のことで、1953年に心理学者のコリン・チェリーによって提唱されました。

 私たちの脳というのは不思議で、様々な音声が聞こえても、その全てを単純にキャッチしているのではなく、関心のあることを選択して聞いているのです。特に、人は自分の“名前”を呼ばれると強く反応するそうです。

 ある会社では、ただ「お客様!」と言っていたのを、「○○様!」と名前で呼びかけるようにしたところ、再来する顧客が増加したそうです。また、病院では医師や看護師が患者に「○○さん!」と名前で呼びかけますが、これも本人確認をするという目的と共に、信頼と安心感を深めるという効果があります。

ファーストネームで呼び合える友達

 私たちが何かのグループに入って、その仲間と知り合った時、最初は「山田くん」とか「加藤さん」と、相手の姓を呼びます。だんだん親しくなると、「山田!」と呼び捨てにしたり、「カトちゃん!」と愛称で呼んだりします。さらに、仲の良い親友になると「マサト!」とか「エミ!」などと名を呼び合える関係になってきます。

 ところで、あなたはファーストネームで呼び合えるような親友がいますか? そんな友達を持っている人はとても幸せな人だと思います。

 私たちの人生の中で、“何でも本音で話し合える友達”がいるということは、どれほどありがたいことでしょうか。暮らしは裕福でも、「そのような友達がなくて寂しい」と言う人はたくさんいます。もし親友をつくることができれば、それは一生の宝になります。嬉しいことも悲しいことも分かち合うことができ、会話もはずみ、毎日をよりカラフルに楽しく暮らすことができます。

夫婦は最高の“親友”でありたい

 一緒に人生を歩む仲間として一番近い存在であり最も大切な存在、それは“家族”でしょう。仲の良い夫婦になり、親密な親子になれれば最高です。

 しかし、結婚して夫婦になったとしても、本当に親密な夫婦になるのは容易なことではありません。お互いに誠実な研究と工夫と努力が必要です。

 ある夫婦の親密度は、「お互いをなんと呼び合っているか」にも関連しています。

 具体例を挙げると、おおよそ次のようなイメージです。

ステージ1
夫=「おい」「ちょっと」
妻=「ねぇ」「ちょっと」

ステージ2
夫=「おまえ」
妻=「あんた」

ステージ3
夫=「君」「あんた」
妻=「あなた」

ステージ4
夫=「ママ」「お母さん」
妻=「パパ」「お父さん」

ステージ5
夫=「綾子」「あやちゃん」
妻=「信夫さん」「のんちゃん」

 あるアンケート調査では、以下のような結果が得られました。(複数選択可)

【夫が妻を呼ぶ時】
「ママ」「お母さん」…47.7

「名前」46.0

「愛称」27.7

「おい」「ちょっと」15.0

「おまえ」3.3

「その他」2.3

【妻が夫を呼ぶ時】
「パパ」「お父さん」52.7

「愛称」38.8

「名前」29.8

「ねぇ」「ちょっと」11.3

「あなた」2.2

「その他」3.2

(ハッピーノートドットコム・ゴーゴーリサーチ第96回分析結果より)

思い切って、ファーストネームで呼んでみよう!

 誰でも抽象的に呼ばれるよりも、自分の名前を呼ばれるほうが嬉しいと言います。特に、ファーストネームで呼ばれると好意を感じると言います。

 専門家の話では、人は自分の名前を呼ばれると脳内の「オキシトシン」というホルモンの分泌量が増えるそうです。「オキシトシン」は、“愛情ホルモン”とも呼ばれ、出産や母乳生成に関係の深いホルモンですが、嬉しい時に分泌され、“寛容になり思いやる気持ちを芽生えさせる作用”もあると言われています。

 さあ、今晩からでも、二人きりになった時に勇気を出して、パートナーを“名前”や“愛称”で呼んでみましょう!

 もちろん、ステージ1だった人がいきなりステージ5を試みて自爆する…という場合もあり得ますので、段階を追って頂上を目指すというのも良いかもしれません。

 しかし、たとえどんなに時間がかかっても、お互いを愛情のこもったファーストネームで呼び合えるような夫婦になることを目指して行きたいものですね。