2019.08.07 17:00
家族の絆づくり 77
「孝情」と「忠情」の違い
ナビゲーター:阿部 美樹
「社会的価値」と「血統的価値」
誰もが「子孫繁栄」を望みますが、そのために日本では「家名を守る」こと、韓国は「血統を守る」ことを重視します。
日本は商売繁盛を願い、商才のある養子を跡取りにすることもありますが、韓国はあくまでも長子を中心として血統を継承させていくことを望みます。
日本は「医者」「先生」「社長」など、現在の社会的地位や立場で人の価値判断をする傾向がありますが、韓国では「〇〇王様から75代目に当たる」とか、「両班の高貴な家系」など、血統的背景に価値を持つ傾向があります。
このような血族意識が強いので、韓国ドラマでは「出生の秘密」というどんでん返しの結末が出てくることが多いのです。
日本の苗字は、他人と区別するために付けたので限りなく多くなり、現在は30万近くあるといわれます。
しかし、韓国は258しかありません。韓国の苗字は、「誰の子供であるか」という血統を表すものであり、自分のアイデンティティーを示す大切なものです。
「忠情の生活」と「孝情の生活」
日本には「社会秩序重視の文化」があり、公衆道徳であるマナーやルールを守ることを幼少時から教えられ、「人さまに迷惑をかけないように!」という意識を強く持ちます。
一方、韓国には「家庭秩序重視の文化」があり、親に対する孝道を中心に長幼の序を大切にすることを幼少時から教えられます。
韓国における「侍る」という言葉は、祖父母・父母の情を中心に生きることを表しますが、日本の伝統精神を「武士道」と表現するように、「侍る」という言葉は上司や責任者に仕えること、従うことを表します。
ですから、「侍る生活」とは韓国では「孝情の生活」ですが、日本では「忠情の生活」になりやすい傾向があります。
「敬礼する」という言葉は、上司や身分の高い偉大な人に敬礼するというイメージですが、韓国では「親に対して敬礼(敬拝)をする」という礼節と捉えます。
孝情を中心に、親に敬礼(敬拝)をささげることは、親を絶対的に受け入れ、肯定することともいえます。親を肯定的に受け入れると、自分自身を肯定的に受け入れることができます。