家族の絆づくり 75
日本人はなぜ「自尊感情」が低いのか?

ナビゲーター:阿部 美樹

「和」を求める日本人

 国立青少年教育振興機構が、2010年と2017年に日本、米国、中国、韓国の高校生を対象として「自尊感情」に関する調査をしました。

 「私は価値のある人間だと思うか?」という質問に対して、「そうだ」「まあそうだ」と回答した日本人高校生は、4カ国中、最低となっています。

 米国・中国・韓国が共に80%ほどですが、日本だけは40%ほどです。何が原因しているでしょうか。

 その原因の一つとして「みんな」の文化があります。
 日本人は「みんなのうた」「みんなのトイレ」「みんなの党」「みんなの就職活動日記」など、「みんな」という言葉を好んで使います。

 日本では集団の中において個人がどうあるべきかという教育を重視し、集団清掃、学校給食、行事などで「和」の大切さを教えます。
 みんなと同じことが「善」であり、みんなと違うことが「悪」であるかのような雰囲気があるので、周りの評価や視線が気になります。

 とりわけ、日本に「対人恐怖症」や「ひきこもり」が多いのは、このような文化の影響も少なからずあるからでしょう。

「社会の目」を気にする日本人

 個性を重視して個人の才能を伸ばし、飛び級ができる欧米型の教育と違い、日本の義務教育では誰もが進級でき、飛び級などはありません。
 進級できても画一化、平均化された教育では、授業についていけない「落ちこぼれ」や「浮きこぼれ」を生む原因にもなっています。

 日本人は、「和」を乱すことを嫌う傾向があるので、みんなと違うことが個性として受け止めるどころか、劣等感になることがあります。そして、「みんな」というのは、「社会の秩序」「社会の目」「社会の常識」を軸とした捉え方なので、「社会の役割を果たしている=価値がある」と考えます。

 いい学校に入り、いい会社に就職し、いい給料をもらい、いい家庭を築き、いい社会人になることこそ、価値があると考えがちです。

 しかし、社会の役割を果たすことが、真の価値を決定するものなのでしょうか?(続く)