青少年事情と教育を考える 70
地域社会は子供の安全を守れるか

ナビゲーター:中田 孝誠

 川崎市でスクールバスを待つ小学生らが男に切りつけられ2人が亡くなった事件から1カ月がたちました。この間、国や自治体で子供たちの登下校時の安全対策が議論されています。

 この事件は安全と思われていたスクールバスを待っている時に起きた事件だったため、対策の難しさが浮き彫りになりました。その中で、地域で子供を見守ることの重要性も指摘されています。

 しかし、今の社会では地域ぐるみの対策が不可能に近いと指摘する意見もあります。

 学校安全の問題を研究している桜井淳平・筑波大学特任研究員は「登下校中の事件・事故が起きるたび、日本では『地域ぐるみの見守り』が半ば常とう句のように叫ばれてきた。しかし、地域ぐるみの見守りに依存した学校安全は、すでに限界を超えているのではないか」「例えば、過疎化が進んでいたり、共働き世帯が多かったりする地域では、そもそも子供の登下校時間中に見守りができる大人の数が限られている。そして、その限られた大人の負担が大きく、持続可能性という観点からも問題がある」(「教育新聞」610日)と語っています。

 記事の中で桜井氏も指摘していますが、全国には地域住民による防犯ボランティアの団体が約4万7千あり、子供の登下校時の見守りや夜間のパトロールを行っています。しかし、ここ数年は参加する人が減るなどして、活動の維持が難しくなってきているのです。
 桜井氏は、警察によるパトロールの強化や防犯カメラの設置などの対策を議論すべきだと述べています。

 地域の目による予防は、児童虐待事件の時も言われます。ただ、家族の規模が大家族(三世代家族)から核家族になり、今や単身世帯も増えました(そもそも社会の風潮も政策も、そのように家族が変化することが良いことのように、国民を後押ししてきたのではないかと思います)。そして地域のつながりも薄れた今、家族の中の問題を地域で見守ることは難しくなっています。

 家族や地域社会のつながりをどう考え、どんな政策をとるのか。子供の安全を守るためには、そうしたことも議論する必要があります。