青少年事情と教育を考える 71
「子供と読書」で親の育児ストレス低下

ナビゲーター:中田 孝誠

 読書が子供の成長に良いということは、子育ての経験者であれば感じていることではないかと思います。読書によって脳の言語能力に関係する神経が発達する、といった研究もあります。

 厚生労働省が先日発表した調査で、8歳(小学2年生)の子供の読書量が増えているという結果が出ています(「第821世紀出生児縦断調査」)。
 これは、2010年に生まれた現在8歳の子供と、2001年に生まれた子供が8歳だった時の読書量を比較したものです。

 これによると、2010年生まれの子が1カ月間に読んでいる本(児童書や絵本など)が平均「23冊」という子が26.6%、「47冊」が24.5%、「811冊」が10.4%、「12冊以上」が18.3%でした。01年生まれに比べて、4冊以上読んでいる子の割合が53%で半数を超えています。

 また、親がたくさんの本を読むほど、子供も多くの本を読むという傾向がありました。例えば、母親が1カ月に読む本が「1冊」の場合、子供は「23冊」が29.3%でした。それに対して母親が「811冊」「12冊以上」読む場合は「12冊以上」読む子供がおのおの31.4%、59.2%です。家庭の雰囲気は影響力が大きいということです。

 もう一つ、読書の効果として挙げておきたいのは、親の育児ストレスの改善です。つまり親が本の読み聞かせをすると、親子の温かなコミュニケーションができ、愛着が深まります。もちろん子供の感情も安定します。それによって母親の育児ストレスが低下することがデータによって明らかになったというのです。しかも、読み聞かせが親の脳も活性化するという結果も出ています(『「本の読み方」で学力は決まる』)。

 読み聞かせによって親子の温かなコミュニケーションができ、親子の愛着が深まります。それが子供に忍耐力や自己抑制、思いやり、さらに自尊心などの感情コントロール、つまり「非認知能力」を育てることにつながるとも言われています(同書)。

 現代はスマートフォンが子供たちに浸透し、ゲーム障害の問題も指摘されています。高学年になると読書する子も減っていきます。できれば子供が小さいうちに読書の効能を家庭に取り入れたいところです。