2019.07.01 17:00
コラム・週刊Blessed Life 73
G20大阪サミット開催、平和構築への一大転機に!
新海 一朗(コラムニスト)
「G20大阪サミット2019」が6月28日、29日に大阪インテックス(咲洲)において開催されました。
G20メンバー各国および招待国8カ国さらに国際機関九つの参加という大掛かりな規模の国際会議を、日本がホスト国として開催できたことは、それだけでも光栄なことですが、現在の混迷する国際情勢と山積する課題の解決に向けた指針を取りまとめていく重要かつ困難な作業を、議長国の日本は進めなければなりません。
先進国首脳(米欧日など)と新興国首脳(中印露など)が、自国の立場を有利にしようとする神経戦が会議の空気を緊張させながらも、各国間の協調の道をいかに見いだすか、そのことが重要ですから、安倍首相ならびに関係スタッフのご苦労は大変なものであったと推察します。
何と言っても、先進国代表のアメリカのトランプ大統領、新興国代表の中国の習近平主席、この両者の存在感は否が応でも大きく、そのような空気の中で、中国に寄り添う国家、米国に追随する国家、その中間で様子見をする国家、さまざまなスタンスを見せながら参加国は会議に臨んだわけです。
28日に行われた日米首脳会談では、北朝鮮とイランの安全保障上の脅威に対して、連携しながら関与していくことを確認、そして日米同盟の技術的優位を維持するための対策を講じることに合意しました(ファーウェイなどに対する政策協調)。
トランプ大統領は、最近、日豪などの同盟国に対して、貿易問題と安全保障問題をリンクさせて語ることが多く、米国の負担が大きく不公平だとする思いを吐露しながら、貿易問題の不均衡是正(米国の赤字解消)を求めたり、武器購入を迫ったりする傾向があります。
今回のG20で日本のリーダーシップが発揮されたのは、環境問題としての「海洋プラスチックごみ」に関してであり、これを解決するために、海洋プラごみを2050年までに流出ゼロにする目標を合意に取り付けたことです。
「2010年、世界192の国や地域で2億7500万トンのプラごみが生まれ、480万トンから1270万トンが海洋に流れ出している」(米科学雑誌「サイエンス」2015年2月)という公表以来、プラごみによる環境破壊の危機感を先進国と新興国は共に募らせていた深刻なテーマです。
ホスト国日本のリーダーシップを困難にした問題が、「世界経済、貿易」をテーマとする分野です。
デジタル経済の時代においてどのような世界ルールを作るかの論議が不可避となり、その事が検討され、「大阪トラック」の創設を宣言する一方、WTO(世界貿易機関)の改革の必要性に言及はしましたが、具体策は何もありませんでした。
大きな問題として、米国の保護主義がありますが、米国には米国なりの戦略があり、知財窃取などによる中国の一方的な受益を是正する構えは断固として崩していません。
貿易摩擦が世界経済のリスク要因であることは、参加国全ての共通認識です。しかし、米中の衝突を世界はどうすることもできない、G20の場でも容易に解決される問題ではないということです。
29日の米中首脳会談でもそのことが明らかになりました。お互いに譲れない国家としての威信を懸けた戦いが、貿易問題の深層です。
背後にあるのは世界覇権を巡る闘争なのです。