2019.07.08 17:00
コラム・週刊Blessed Life 74
中国、南シナ海の完全制覇を着々と!
新海 一朗(コラムニスト)
南シナ海にあるスプラトリー(南沙)諸島のスービ(渚碧)礁(しょう)上に、中国はすでに400棟近い建造物を造っており、将来、人民解放軍を数百人常駐させて、行政拠点とする可能性があると、安全保障専門家たちは憂慮しています。
スービ礁は、中国がスプラトリー諸島に設けている七つの人口拠点のうち最大のものです。七つのうち、ビッグスリーと言われるのは、ミスチーフ(美済)、ファイアリークロス(永暑)、スービ(渚碧)です。これらの場所には、ミサイル発射台、滑走路(3キロメートル)、格納庫、人工衛星や外国の軍事活動を追跡できる設備などのインフラが整備されています。
スービ、ミスチーフ、ファイアリークロスの三つの礁には、それぞれ1500人から2400人規模の連隊が駐屯(ちゅうとん)可能であると見られます。中国は密かにここまで設備をつくり上げてしまっていたのです。
米国は、中国の南シナ海での軍事拡張に対して、非常に警戒を強めており、三つの礁に設置された対艦巡航ミサイル、地対空ミサイルを、南シナ海を巡る戦争事態に備えていると見ています。
実際、中国は5月18日、「南シナ海を巡る戦い」への準備として、環礁の一部において、爆撃機の離着陸訓練を実施しています。また、中国の大型強襲揚陸艦などが三つの礁の本格的な海軍用埠頭(ふとう)を利用しています。このように、スプラトリー諸島における中国の軍事基地は完成しており、部隊がまだ派遣されていないだけであると見てよいのです。
そして、6月29日から7月3日の日程で、中国海軍は南シナ海で軍事訓練を行っており、この中で、対艦弾道ミサイル発射実験を行いました。
中国は、南シナ海に空母を派遣しているのは米国だと非難していますが、そもそも、米国に「航行の自由」作戦を行わせるに至った経緯を考えると、中国が「九段線」と呼ぶ領海線を勝手に設けて、ベトナム、フィリピン、台湾、インドネシアなどが認めない海域まで、自国のものとする一方的な占有権を主張したことから、米国の中国牽制のための航行が始まったのです。
オランダ・ハーグの仲裁裁判所が、中国の主張する「九段線」を無効であり根拠が全くないとしたにもかかわらず、その採決を無視して、南シナ海奪取を強行しています。責められるべきは米国ではなく中国です。どこまでも厚かましい中国です。
米国のフィリップ・デーヴィッドソン海軍大将は、4月の議会証言の中で「ほとんど対米戦争に近いシナリオのもとで、中国は今や南シナ海を支配する能力を持ちつつある」と語りました。中国の軍事暴走を認める国などはどこにもありません。