シリーズ・「宗教」を読み解く 71
現代日本の宗教事情③
日本人の「宗教」「非宗教」「無宗教」

ナビゲーター:石丸 志信

 一般の日本人は社会の外部にある「宗教」と関わるのは躊躇(ちゅうちょ)するが、社会に薄く広まっているものを「非宗教」と見れば、そこに関わることにさほど抵抗はない。日本人の「無宗教」という意味はそこにあるようだ。

 「非宗教」とするものには三つの形態がある、と先の宗教学者(堀江宗正氏:日本の宗教心理学者、東京大学准教授)は言う。

 一つは、「一般的慣習」と見なされる神道の行事や儀式。一つは、葬式仏教。もう一つは、自然宗教に近い民間宗教、あるいはスピリチャリティーと呼ばれるものだ。

▲写真は明治神宮

 多くの日本人が正月には神社に初詣に出掛ける。明治神宮の三が日の参詣者は優に300万人を超える。200万人を超える神社が全国に10社はある。全国合わせればおよそ9900万人の人出があるとの警視庁の発表もある。

 世界の各宗教聖地を訪れる人の数に比しても、驚くべき数だが、大半の人はそれを宗教行為として行っている意識はないだろう。年の初めに神様に一年の安寧を祈るのは当たり前だと思っている。

 神社を訪問すると、お宮ではどのような宗教のかたでもお参りできます、と説明してくれる。神社にお参りするのは、特定の宗教行為ではなく、日本人の慣習であり、伝統だという考えが根底にあるからだ。