シリーズ・「宗教」を読み解く 70
現代日本の宗教事情②
「宗教」という言葉から日本人が抱くイメージ

ナビゲーター:石丸 志信

 「宗教」という言葉から日本人一般が抱くイメージは、「迷信」「私事」「外来」「古層」の四つが複合的に絡まったものだ。

 そのイメージは明治時代の初期に英語の「religion」を翻訳した後に出来上がったものだという。

 科学的合理主義から見て、宗教は「迷信」だとする見方は強い。

 また、心の中で何を信じても個人の自由だが、公の秩序を乱すようなことはしてはいけないという「私事」に留まるべきとの見方がある。

 西洋の先進文明の精神的支柱であるキリスト教を「外来」の宗教とみる見方もある。

 一方、さまざまな文明に特有の宗教があるとの見方で、民族固有の価値観を知るために学ぶべき「古層」とする見方がある。

 前の二つは宗教に対するマイナスのイメージが強い。

 無神論を標榜する共産主義社会でも宗教の自由を保障すると言い切ることはできる。「私事」として心の中で何を信じてもいいが、それを人に伝えたり強要したりしてはいけない、と言えるからだ。

 私たちの「宗教」理解も、このような複合的イメージに影響を受けているだろう。
 世界の宗教者との出会いの場では、自らのイメージを吟味し、時に修正することになる。


【参考文献】堀江宗正編『いま宗教に向き合う1 現代日本の宗教事情(国内編Ⅰ)』(岩波書店2019年9月)