シリーズ・「宗教」を読み解く 72
現代日本の宗教事情④
「非宗教」としての葬式仏教とスピリチャリティー

ナビゲーター:石丸 志信

 堀江宗正氏(日本の宗教心理学者、東京大学准教授)の言う「非宗教」の三つの形態の二つ目は葬式仏教だ。

 日頃は、お寺との付き合いもなく無宗教だと思っている人も、親族や親戚が亡くなると、僧侶を迎えた仏式の葬儀が営まれることが多い。
 その時になって、家の宗教として仏教を意識する。葬儀社が準備する葬儀においても、何宗の僧侶を呼ぶという段になって、家の宗教を確認せざるを得なくなる。
 そうはいっても、お経を読めるわけでもなく、作法も十分に分かっているわけではない。ただ言われるままに葬儀は進み、指導されるままに法要を進めていく人は決して少なくない。

 今日簡略な葬儀を求め「直葬」が広がってきたといわれるものの、一般の人は葬儀だけは仏式をイメージする。それが長い日本の伝統だと思っているからに他ならない。

 三つ目は、自然宗教に近い民間宗教や現代のスピリチャリティーの類が非宗教とされる。
 元旦に初日の出を拝んだり、富士山を遠く拝して手を合わせたりするのも、特別な宗派の宗教儀式とは思われていない。日本人なら誰もがなす自然な行為だと見るからだ。

 また、ひと頃はやったオカルトや近年高まってきたパワースポット巡り、スピリチャリティーなども、特定の宗教の枠にはおさまらない。宗教性をどこかに秘めながら、非宗教の衣をまとっているので、宗教嫌いの若者たちにも人気を呼んでいる。