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通いはじめる親子の心 19
謝ることを求めず許す

 アプリで読む光言社書籍シリーズ第6弾、『通いはじめる親子の心〜子供の気持ちに「共感」する』を毎週火曜日配信(予定)でお届けしています。

多田 聰夫・著

(光言社・刊『通いはじめる親子の心〜子供の気持ちに「共感」する』より)

第四章 愛情を伝える

謝ることを求めず許す

⑤許す
 第五は、許すことです。これも大きな愛のポイントとなります。人を「許す」ことができるまでは、いつまでも心にしこりがあります。怒りや恨みがあるので、心が痛み、傷となっているのです。人に謝ることを要求している間は、ある意味、被害者であり続けるのです。ですから、被害者であり続けるかどうかは、自分自身が決めるのです。被害者である限り、心は成長することができません。

 親子の関係の中で、謝ること、許すことができるようにしてください。

 ある父親の話です。

 「信頼口座という考え方を知り、深く考えてみました。『私の存在は家族の一人ひとりを幸せにしているのだろうか』。心の中に浮かんできた答えはノーでした。私の存在は、娘を不幸にしているからです。それに気付いたとき、心が引き裂かれる思いでした。ショックからある程度立ち直ってから、この悲しい事実を変えるには、まず私自身が自分のあり方、心の持ち方を変えなければ駄目だと気付きました。

 娘に対して今までとは違う行動を取り、彼女を本当に愛そう、と決心しなければなりませんでした。娘を批判することも、お互いに係っている問題の原因を彼女のせいにすることもやめなければなりません。そして、娘とけんかして、彼女に勝とうとすることもやめなければなりませんでした。

 早速、自分の決意を行動に移すことにしました。一カ月の間、信頼口座に毎日五つの『預け入れ』をすることに決めたのです。

 その日の午後、娘が学校から帰って来た時、温かい笑顔で迎え、『学校はどうだった?』と聞いてみました。『あんたには関係ないでしょ』という冷たい返事が返ってきました。私はぐっと我慢し、その言葉を聞かなかったふりをしました。そしてニコニコして『いや、元気かなと思ったんでね』と言いました。

 それから数日、預け入れを続けるように努力しました。そして娘のトゲのある言葉も聞こえないふりをし続けました。今までやり返すのが癖になっていたので、それはかなり難しいことでした。そういう言葉を聞くたびに、今までどれほど悲惨な状態にあったのかを思い知らされました。そして、今まで自分のことを棚に上げ、一方的に娘に変わることを要求してきたことも分かりました。

 そのようにして、娘を変えようとするのではなく、自分の気持ちや行動を変えることで、まったく違う目で娘を見ることができるようになったのです。彼女が愛情を必要としているということも分かってきました。私を無視するような彼女の態度を受け流すたびに、怒りを感じるのではなく、愛情を持ってそれに対応する力が湧き上がってきたのです。……」

 これまでに挙げた五つのことを参考に、家族の一人ひとりの心に信頼を預け入れていく生活に挑戦してみましょう。そうすることによって、「自分が変わる」のです。そうすれば、何でも話し合える家族関係を築く土台ができていくのです。

 子供の心に信頼を預け入れる具体的な方法を決め、それを実際に実践できているか、チェックするのは、有効な方法です。(続く)

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 次回は、「『あなただけ』の時間を持つ」をお届けします。


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