シリーズ・「宗教」を読み解く 65
宗教対話雑感②
物語を通して宗教を知る

ナビゲーター:石丸 志信

 宗教的対話に関する議論の場で、八百万の神々を尊び拝する日本は、宗教的に寛容で、宗教の調和をもたらすために重要な役割を果たし得る国であると自負する人は多い。
 これに対して、「一神教」は非寛容で排他的だと対立的に論じられる。しかし、果たしてそうだろうか。

 それぞれの宗教には、何らかの形で価値の基本構造があり、体系がある。それは理論的に整理されていなくても、物語において表現されてきた。その物語に敬意をもって耳を傾けるとき、相互の伝統に人類共通の教え、普遍的価値を見いだしていくはずである。

 天地の創造と人類始祖の堕落、そして救済に向かう歩みをたどる選民の歴史を記した聖書の物語をどれほどの日本人が知っているだろうか。その流れの中で誕生した救い主イエスの物語をご存じだろうか。

 人間の生老病死から解放されるために苦悩したブッダの物語。わが国の誕生の物語にわれわれはどれほどなじんでいるだろうか。

 宗教対話は、それぞれの伝統が紡いできた物語を偏りなく知ることから始まる。