家族の絆づくり 60
人生の質を問う「質問」の力

ナビゲーター:阿部 美樹

「電車」から「馬車」へ
 時代の移り変わりとともに、社会が求める人間像が変化しているように思います。
 いつの時代も、「真面目さ・従順さ・忍耐力」が大切ですが、今の時代はそれ以上に「意欲・主体性・行動力」が求められています。「知識・経験・記憶力」も必要ですが、さらに「柔軟性・アイデア・先見性」などが必要になっています。

 今は、過去の経験を生かしていくというよりも、経験したことのない、先の見えない、全く新しい時代圏を迎えています。
 では、このような時代にどんな準備が必要でしょうか。
 教育や研修するスタイルも変化が必要です。

 かつては「トレーニング」というカリキュラムに基づいて研修するスタイルでした。
 トレーニング(Train+ing)の語源は、「電車」です。電車は行き先とルートが決まっているように、トレーニングは明確なカリキュラムに基づき、一定のゴールにたどり着くようにします。

 しかし、今の時代は過去の経験からは予想できない時代です。画一化した教育ではなく、個性を尊重して一人一人の違いを認める教育、まさに「オーダーメイド型」の教育が必要なのです。

教科書から問題集へ
 そこで必要なのは、トレーニングではなく「コーチング(Coach+ing)」を通しての教育です。

 コーチの語源は「馬車」です。馬車は電車と違って、道さえあれば、行きたい所に、行きたいルートで行くことができます。

 トレーニングは決まった答えを身に付けることですから、「教科書を暗記する」ような学習になりますが、コーチングは自分で答えを探すことが大切なので、「問題集を解く」ような学習になります。

 ゴールに向かって「押し出すトレーニング」から、「引き出すコーチング」です。
 押し出すためには、分かりやすく「教えること」が必要ですが、引き出すためには、相手が分かるまで、答えを見いだすまで「尋ねること」が必要です。

 「どうなりたいですか?」と質問されるとゴールが見えてきますし、「どうしたらいいですか?」と質問されると方法が見えてきます。「いつまでにしたいですか?」と質問されると時が見えてきます。

 質問は、字のごとく「人生の質を問う」ための大切なキーワードです。