家族の絆づくり 59
心身共に幸せに導く「笑顔」

ナビゲーター:阿部 美樹

本当の笑いと作り笑いの違い
 笑顔が人間の心身に与える効能が、医学的・科学的に実証されてきています。

 斎藤一郎・鶴見大学教授によると、fMRI(磁気共鳴機能画像法)という検査機器で、うれしい、楽しい気持ちを感じて笑っている人の脳を調べたところ、記憶や感情をコントロールする「前頭前野」の血流が増し、活性化していることが分かりました。
 しかも、うれしい、楽しい気持ちを感じていない人に「笑顔の表情」をしてもらうだけでも、前頭前野に同じ反応が見られたといいます。感情が伴わなくても、表情を笑顔にするだけで幸せを感じたのと同じ反応が脳に起こりました。

 アメリカのカンザス大学が実施したストレスと笑顔に関する実験でも、笑顔がストレスの軽減につながることが実証されています。
 実験では、「笑っていないグループ」「作り笑いのグループ」「本当に笑っているグループ」の三つに分類し、ストレスを感じる作業をした後の心拍数を計測しました。
 すると、作り笑いと本当に笑っている「笑顔グループ」では、作業中の心拍数が低く、ストレスが少ないことが明らかになりました。

表情の選択能力を高めよう
 その他にも、脳の血流が増すことで認知症の予防や改善につながる、顔の表情筋が鍛えられることで顔が若返るなどの効果があります。
 また、笑顔になることで自分自身が幸せになるだけでなく、周りの人にも幸福感が連鎖されていきます。
 このように、笑顔にはたくさんの優れた効果があるようです。

 そこで注目すべき点は、「うれしくて笑う笑顔」と「作り笑いの笑顔」のどちらにおいても脳の活性化やストレス軽減などの効果があることです。
 「笑う門には福来たる」ということわざもありますが、「幸福だから笑うわけではなく、笑うから幸福なのだ」ということです。

 神様は笑顔になることで幸せになるように創造してくださいました。人間は他の動物と違って、顔の表情が豊かであると同時に、どのような表情をするかは、各自の選択で決定することができます。環境や相手がどのような状況でも、「笑顔」を絶やさないことこそ、幸せになれる最も大切な秘訣なのかもしれません。