青少年事情と教育を考える 53
東京都「性教育の手引」を改定、学習指導要領超える内容も

ナビゲーター:中田 孝誠

 東京都教育委員会は、「性教育の手引」の改訂を進めています。現在の手引は平成16年に作成されたものですが、この3月をめどに改訂される見込みです。

 報道によると、都教委の素案が作成委員会に了承されました。作成委員会は有識者と学校長、教育庁の担当者などで構成されています。

 内容は、学習指導要領の範囲を超えて、中学校でも避妊や妊娠中絶を扱う際の具体例が明記される方向です。また、こうした授業を行う場合は保護者の理解を得ることを前提にしています。

 この改訂には、昨年3月に足立区の中学校の公開授業で性交や避妊、中絶など中学校の学習指導要領にない内容が取り上げられたことが問題になりました。この授業では生徒に具体的な性行為の是非についてアンケートに答えさせたり、授業中にもクラスメートや参観に来ている人たちの前で答えさせていたということです。

 都教委は今回の改定のため、産婦人科医を講師にしたモデル授業を行っています。この中では、「正しい知識と判断力が必要」ということで、避妊や中絶も取り上げられています。

 基本的考え方としては、「学校における性教育は、児童・生徒の人格の完成を目指す人間教育の一環であり、豊かな人間形成を目的に、生命の尊重、人格の尊重、人権の尊重などの根底を貫く精神である人間尊重の精神に基づいて行われる」「児童・生徒等の状況に応じて、保護者の理解・了解を得ながら指導をしていくことが重要」「改訂された『性教育の手引』を参考に、全ての教員が共通認識の下、子供たちが性に関して正しく理解し適切に行動できるよう、性教育の充実に取り組んでいく」としています。

 また、性を巡る現代的な課題として、「情報化の進展」や「妊娠・出産」「性感染症」、さらに「性同一性障害」を挙げています。

 発達段階が異なる子供たちに対する、性という非常にセンシティブで、将来の人生に直結する教育は、時には一斉ではなく個別指導するなど、慎重に行う必要があります。保護者の理解・了解は当然でしょう。

 そして、「児童・生徒の人格の完成を目指す人間教育」の一環であるならば、「正しい性知識を身に付けているかどうか」が先行するのではなく、性道徳を重視した授業が行われるべきだと思います。