家族の絆づくり 53
怒りの上手な表現の仕方

ナビゲーター:阿部 美樹

怒りの背後にある本当の気持ち
 怒っている人は、「怒らせる相手が悪い」「周りが悪い」と考えますが、同じ状況でも怒らない人もいるのですから、周りのせいというよりも本人の心の持ち方の問題なのです。

 怒りやすい人の特徴は何かというと、自分の本当の気持ちを表現せず、相手に指示・命令しようとすることです。

 例えば、部屋を散らかして整理整頓をしない子供を見て、「片付けなさい!」と感情的に言う場合があります。感情的に命令されると、子供は自分に問題があったとしても感情的に反発してしまいがちです。
 そのような言葉を発する前に、散らかっている「事実」を伝えて、「片付けてくれるとうれしいんだけど・・・」という「自分の気持ち」を伝えることができたら、相手は冷静に受け止めることができます。

 また、待ち合わせをして遅れて来た相手に、「何やっているんだ。なぜ連絡しないんだ!」と感情的に怒り出すと、相手も感情的に「電車が遅れたんだよ。メールを送ったのに見てないのか!」と反発する場合があります。
 相手の非を責める前に、「30分も遅れたけど、何かあったの? 心配していたんだよ」と自分の気持ちを正直に伝えた場合、相手も素直に「遅れてごめん!」と反省の言葉を返してくれることでしょう。

怒りを表現する四つのステップ
 怒りの背後には、伝えたかった本当の気持ち(一次感情)があります。
 それは、悲しみ、寂しさ、驚き、心配、恐れ、不安などです。
 その気持ちを伝えたくて憤りの怒りをぶつけてしまうのですが、相手には伝わりません。せいぜい伝わるのは、「怒らせると怖い!」「うるさいやつ!」という表面的なことだけです。

 怒りを表現する四つのステップを紹介します。

 第一に、「事実を伝える」ことです。できるだけ主観を入れず、具体的な状況や相手の言動の内容を伝えます。

 第二に、「自分の本当の気持ちを伝える」ことです。素直に、今困っていること、心配している自分の気持ちを伝えます。

 第三に、「自分の欲求。願望を伝える」ことです。自分の願いを、命令ではなく「提案」として相手に伝えます。その提案は受け入れられない場合もあります。その時も感情的になるのではなく、内容を変えて再提案すればよいでしょう。

 第四に、「相手に選択してもらう」ことです。上記の提案に対して返事をもらうことで、次のステップに進むことができます。
(次回に続く)