家族の絆づくり 52
怒りは無意識に相手を不幸にする

ナビゲーター:阿部 美樹

怒りは破壊衝動
 仲の良い家族は、互いに「感謝する心」がありますが、「夫婦仲が悪い」「親子仲が悪い」など、関係性が悪い家族には、必ず「怒りの心」があります。

 怒る人とは、怒鳴り散らすような気性の激しい人もいれば、怒りがあるのに忍耐強く我慢しながらイライラしている人もいます。

 その怒りは「破壊衝動」を持っているので、何かを破壊しようとします。
 怒りが人に向かえば、「暴力・暴言」など攻撃的な言動になります。自分の体に向かうと、ぜんそく、アトピー、胃潰瘍、頭痛などの心身症になり、自分の心に向くと、妄想、幻聴、幻覚などうつ的症状になったりします。
 他にも、過食や拒食などの摂食障害、アルコールやギャンブルへの依存症状として現れる場合もあります。

 怒りを感じる相手は、「上司」「親」「社会」など、自分の方が立場的に弱く抗議しにくい相手であることが多いものです。
 半面、怒りをぶつける相手は、「部下」「年下」「子供」など、自分よりも弱い立場の人であることが圧倒的に多いのです。

 親が仕事のストレス、夫婦げんかなどによる悩みや不安から形成された怒りを持っている場合、家庭の中ではその怒りを子供が受けることになります。子供を最も傷つけるのは、「親の怒り」です。

怒りを持った親の養育態度
 怒りを持った親の養育態度は次のような特徴があります。

 第一は、「子供の個性の否定」です。子供をあるがままに受け入れることができず、理想の子供像を押し付けます。

 第二は、「無関心」です。自分の精神的葛藤の処理に忙しく、子供に関心を持つ余裕がありません。

 第三は、「過干渉」です。親自身の葛藤やコンプレックスを、子供を使って解消しようとして過度に干渉します。

 第四は、「心の交流・共感欠如」です。子供と一緒に楽しいことをしないし、できません。親自身が喜んでいないので、子供と一緒に遊ぶどころか、楽しく遊んでいる姿を見ると不機嫌になります。

 第五は、「親子逆転現象」です。子供を自分の慰め役にしたり、同情させたり、自分から離れないようにします。無自覚のまま子供の自立を妨げるということです。

 第六は、「子供に対する嫉妬」です。不幸な生い立ちの親は、子供が自分よりも幸せに見えると嫉妬します。子供が幸せそうに見えると意地悪をして、自分よりも不幸に見えると、一変して親切に優しくなります。このような怒りを持った親は、子供の幸せを願ったとしても、深層心理では不幸を願う結果になります。
(次回に続く)