2019.02.12 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
トランプ大統領一般教書演説の「意味」
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、2月4日から10日までを振り返ります。
以下、主な出来事です。
米国務省が在韓米軍駐留経費について韓国政府と基本合意に達したことを表明(4日)。トランプ大統領が一般教書演説(5日)。政府は8日、児童虐待防止に向けた関係閣僚会議を開催(8日)。米朝首脳会談開催地、ベトナム・ハノイに決定(8日)。自民党大会開催で谷垣禎一元幹事長あいさつ(10日)、などです。
今回はトランプ大統領の一般教書演説を取り上げます。
例年、1月最後の火曜日に行われるのですが、今年はメキシコ国境の「壁」建設予算を巡って議会と対立。一部政府機関が停止するなどの事態となって遅れました。
演説から、「トランプの闘い」が見えてきます。トランプ氏はまず、これまでの取り組みを列挙し、「われわれはかつてないほど地域を安全にし、家族を強固にし、文化を豊かにし、信仰を深めるとともに、中流階級をより大きく、より豊かにすることができる」と語りました。
「安全」「家族」「文化」「信仰」「中流階級」。これがトランプ氏が最も大切だと考えるアメリカの「価値」です。
さらにトランプ氏は、「この二年間、私の政権は、何十年にもわたり両党の指導者が放置してきた問題に立ち向かうため、切迫感をもって歴史的なスピードで行動した」と述べました。
ここにも「トランプらしさ」が現れています。「政治エリート」は、きれいな公約はするが反発を恐れて実行しない。口先だけで問題を先送りしてきた。
トランプ氏が大統領選挙で訴えてきたことです。
外政面では、中国とイランなどへの厳しい取り組みを強調しました。
「中国は長年にわたって米国の産業を狙い、知的財産を盗んできた。今、われわれは中国に対し、雇用と富を盗み取るのはもう終わりだと明確にしておきたい」と述べています。
まとめとしてトランプ氏は、「われわれは、受け継いできたものを無駄遣いするつもりなのか、あるいは、米国人だと誇らしげに宣言するつもりなのかを選ばなければならない」と訴えました。
この意味は、トランプ氏を一貫して支持する元下院議長、ニュート・ギングリッジの言葉で明らかです。
「アメリカは今、政治的・文化的に深く分裂している。一方は、アメリカが繁栄し、強くなり、伝統的価値観に戻る姿を見たいと願い、もう一方は、建国の理念を拒絶し、アメリカを根本的に違った国に変えたいと思っている」(『トランプのアメリカ』、ニュート・ギングリッジ著、産経広報社)
「トランプの闘い」は道半ばです。強く支持したいと思います。