世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

自衛官募集、自治体6割が求めに応じない?

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 2月11日から17日を振り返ります。

 この間、次のような出来事がありました。
 建国記念の日(11日)。政府が幼保無償化法案を閣議決定(12日)。首相、自衛官募集について改めて「6割の自治体が求め応じず」と議会で発言(13日)。日韓外相会談(15日、ドイツ・ミュンヘン)。米中閣僚級通商協議終了、「覚書」作成で合意(15日)。ミュンヘン安全保障会議(ファーウェイ巡り米中が対峙、15~16日)、などです。

 今回は国内問題を扱います。
 安倍首相による自衛官募集に関する発言です。
 安倍氏は自民党総裁として2月10日、党大会で「(自衛官募集について)都道府県の6割以上が拒否している」と述べました。それに対して野党や一部メディアは、自治体の約9割が募集に協力しているとして、安倍氏の発言を強く批判しているのです。

 安倍氏は13日、野党議員の質問に対して、自衛官募集について「6割の自治体が求めに応じていない」と改めて明言しています。

 実態はどうなっているのでしょうか。2018年度に「要請」に応じたのは全1741市区町村のうち36%、残り64%は要請に応じなかったのです。
 「要請とは何か」を説明します。法的根拠となるのが自衛隊法です。

▲防衛省

 自衛隊法第九十七条には「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官の募集に関する事務の一部を行う」とあり、募集は自治体の法廷受託事務となっているのです。
 さらに同法施行令では、「防衛省は自治体に、募集対象者の氏名、生年月日、性別、住所のデータを載せた名簿を、紙か電子媒体で提出するよう要請する」となっています。36%の自治体が「提出」してくれたということです。

 ところが、過疎地で人口が少ない自治体を除く53%の地区町村では、募集業務に当たる自衛隊員が、住民基本台帳法の規定を用いて、膨大な資料を手書きで移したり、閲覧したりするしかなかったというのです。

 野党の、9割が協力したというのは、資料を提出した自治体(全体の36%)と資料提出はしなかったが自衛隊員による資料の書き写しや閲覧を許可した自治体(53%)を加えた数字なのです。紙か電子媒体を出せば済むのにそれを行わない。このようなふるまいを協力とは言えません。

 世界は国が構成しています。それぞれの国家という共同体を維持、発展させ、強くしていく努力を惜しまない。それは健全な愛国心によって支えられるのです。

 世界平和への積極的貢献を目指す日本の、深刻な現実を明らかにした安倍発言でした。