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幼児教育Q&A ~すぐに役立つ12のポイント(6)

 アプリで読む光言社書籍シリーズ第5弾、『幼児教育Q&A~すぐに役立つ12のポイント』を毎週火曜日配信(予定)でお届けしています。

林敏子・著 林三男・監修

(光言社・刊『幼児教育Q&A~すぐに役立つ12のポイント』より)

6.生活習慣

【Q】
 み旨や仕事に忙しい中、子供に、排泄や衣服の着脱など、生活面のことを一つ一つ教えるのが大変です。アドバイスをお願いします。

【A】
 幼児期は、一人前の人間としての基本的な生活ができるようになる時期です。人間の生活の最も基本的なことは、食べること、排泄、着脱、睡眠、話すことなどです。これらのことについて、褒めてあげながら、一つ一つ段階的に、丁寧に愛情をもって教えてあげることが大切です。

 実際、これはとても手の掛かることです。

 特に幼児期の子供は、手が掛かります。動物であれば、生まれたらすぐに自分で立って歩くことができますが、人間はというと、自分では動くこともできません。だれかが世話をしなければ、生きることすら難しいのです。

 なぜかというと、神様がそのように創造されたからです。親と子がよく交流することを、神様は願われたのです。

 子供は、親から手を掛けてもらう中で、親の愛情を感じ、情が安定します。一つ一つ丁寧に、子供に教えることが大変であっても、その中で親自身も人格的に成長することができます。原理的に考えると、親は子供を通して「四大心情圏」における「父母の愛」を体恤(たいじゅつ)することができるということです。

 ですから、「子供に手を掛けることができるのは、大きな恩恵である」ということを、まず理解することが大切です。このことがよく分かれば、子供に手を掛けてあげることが苦にならなくなるはずです。

 逆に、そのことを理解していないと、子供に手を掛けることがたいへん面倒くさいものになり、ときには腹が立ち、いら立ってしまいます。

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 具体例を紹介します。衣服の着脱の指導をする際は、洋服の形を教えながら、最初はすっぽりとかぶることのできる服を用いることが最適です。

 「初めは、ここにお顔を入れてみよう。はい、入りました。次は手をここに入れてみよう。全部入ったかな」と促しながら頭、両腕を入れさせます。そして、「はい、よくできました」と丁寧に言葉を掛けてあげます。それができるようになることで子供の心がしっかりと育ち、それを繰り返すことで手が掛からなくなっていくのです。

 子供は、親の愛情を待っているかのように、一つ一つのことに対して喜びながら行い、その喜びが愛の人格を形成していきます。排泄の指導も同じように、トイレでの排泄が気持ちの良いものであると促すことが必要です。おむつがトイレと思ってしまうと、おむつ離れにとてもてこずってしまいます。

 おむつでしか排泄できないある子供を指導したことがありますが、トイレで排泄できるまでに約一か月掛かりました。毎日さまざまな工夫をしましたが、こちらが根気負けしてあきらめていた時に、本人が自覚して排泄できるようになりました。

 そのときは、失望や叱責(しっせき)などの言葉は禁句にし、少しでもできれば褒める、という闘いでした。毎日、手を掛け、言葉を掛けることで、本人が少しずつ理解していったようです。

 睡眠は、子供がどのように1日を過ごしてきたのかを、親がまず理解してあげることが重要です。十分に愛された実感をもたないまま無理に眠らせた場合は、夜泣きをすることが多いようです。親に自分の言い分が届かず、ストレスをもったまま眠ると、怖い夢を見ることもあります。

 女の子の場合は、本を読んだり、ままごとをしたり、抱っこしてあげたりなど、静かな遊びをしてあげると眠ってくれます。男の子の場合は、激しく遊んであげることで、満足します。

 特に、新しく保育園へ入園したとか、環境が新しくなった場合は、子供自身が興奮しているので、睡眠できる環境を親がつくってあげる必要があります。子供は、親との関係に対して満足感が得られれば、安心して眠ります。眠る前のその時間が、情的に満たされるということが、成長にとって非常に重要です。

 また、決めた時間になったら寝るということも、しつけの一つに入ります。就寝時間になったら消灯して、親も布団の上で一緒に横になり、ごろごろして、楽しく寝かせてあげてください。布団を敷いて、そこででんぐり返しをして遊ぶとか、何でもいいのです。親子で布団の上でじゃれ合うとき、子供にとってはそれがいちばん楽しい時間です。

 布団の上で遊んだあとは、「さあ、寝るよ。じゃ、お祈りしようね」と言って、眠る前の順番をつくることができたら、夜泣きなどはしないで、とてもいい睡眠になると思います。

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 私の子供が小さなときも、寝る前には明かりを暗くして、表現ごっこをやりました。子供も親も馬鹿になって、恐竜の劇(表現)ごっこから、赤ずきんになったり、おおかみになってみたり、あらゆる表現ごっこをして楽しみました。「おてもやん」の歌から、言葉の語呂遊びの歌なども親子で歌いました。すると、30分もしないうちに子供は眠たくなります。それは2歳半ぐらいから始めたのですが、子供が成長して5歳半くらいでやめました。

 しつけにおいては、手を掛ける時があるのです。幼児は、手を掛けてあげれば、素直にそれを受け止めます。しかし、手を掛けないままに思春期を迎え、その時、親に時間ができたからといって手を掛けようとしても、子供は素直に心を開いてくれません。

 ですから、幼児期にできる限り愛情をもって手を掛けてあげてください。丁寧に教えてあげ、少しでもできたら褒めてあげて、自信をもたせるのです。

 褒められながら自信をもって育った子供は、生きるエネルギーにあふれています。反対に、怒られ、否定されて育った子供は、前向きに生きるエネルギーが弱く、消極的になりがちです。このことは「教育」を進めるうえで、すべてに共通して言えることです。

 食事、排泄、着脱、整理整頓(せいとん)などの具体的内容については、『よろこび育つ光の子』(拙著)で詳細に説明していますので、参照してください。

 発達度合いは、どうしても個人差がありますから、単純にほかの子供と比較して、子供を責めないでください。焦らず、忍耐強く、丁寧に、繰り返し、教えてあげるのです。

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 次回は、「言葉を吸収する時期」をお届けします。