2018.11.29 22:00
文鮮明師自叙伝に学ぶ~心の書写 26
私は正しく生きているか
アプリで読む光言社書籍シリーズ第3弾、『文鮮明師自叙伝に学ぶ~心の書写』を毎週木曜日配信(予定)でお届けしています。なお、この記事に記載されている「自叙伝『平和を愛する世界人として』」のページ数は創芸社出版のものです。
浅川 勇男・著
【第七章】私は今、正しく生きているか
私は正しく生きているか
人間は良心の叫びと、邪心の誘惑の中で生きています。良心の声に従って正しく生きることは簡単ではありません。そのことを分かりやすく、しかも感動的に表現している韓国ドラマを紹介します。
韓流ブームは、ヨン様ことペ・ヨンジュンさんが主演した「冬のソナタ」から始まりました。このドラマに中高年の婦人の方々は、尋常ではない感応をしました。ある婦人はこのドラマのビデオを50回見て泣き続けた、といいます。ついにテープがすりきれてしまったそうです。夜は仮眠をとって見続けるそうですが、それでも翌日は疲れは全くなく、むしろ生命力があふれているといいます。
韓国ドラマの特色は、話が長いことにあります。「冬のソナタ」は20話で比較的短いほうですが、次にヒットした歴史ドラマ「チャングムの誓い」は54話、朝鮮半島古代の大国、高句麗(コグリョ)建国を描いた「朱蒙(チュモン)」は81話あります。この長さでも全く飽きを感じさせないのが韓国ドラマの凄みなのですが、これから紹介する現代ドラマの長さは常軌を逸しています。200話を超えるのです。それでも、10話ぐらいにしか思わせない面白さと感動があります。
題名は、「人生画報」といいます。文字どおり、さまざまな人生の光景を描いたものですが、「私は今、正しく生きているか」がテーマになっています。
今から60年前に朝鮮半島で戦争が起こりました。正確な資料が公表されたので、今では真実が明らかになりました。北朝鮮の主席であった金日成(キムイルソン)が、当時のソ連と中国に了解を取り付けて、韓国に一挙に侵攻したのです。不意を衝(つ)かれた韓国軍は敗退を重ね、ソウルは三日目に占領され、ついに釜山(プサン)に追い詰められてしまいました。このため人々は韓国全国から避難民となって釜山に殺到したのでした。文鮮明先生もその一人です。その時の様子を自叙伝で語られています。
「釜山の地は避難民でごった返していました。朝鮮八道の人が全部集まったかと思えるほどで、人が生活できる所は軒先までぎっしりと詰まっていて、お尻(しり)一つ入り込める隙間も残っていません。仕方なく、夜は林の中に入って木の上で眠り、昼になるとご飯を求めて市内に下りていきました」(自叙伝、122ページ)
戦争前、学校の校長先生がいました。彼は清廉潔白な人格者で、常に「私は今、正しく生きているか」を自らに問い、良心の命じるとおりに生きる人でした。そのため多くの教師と生徒から尊敬されていました。お金持ちが裏金で子供を卒業や入学してもらおうと相談を持ち掛けますが、彼は一切話に乗りませんでした。まさに「正しく生きて」いたのです。そのため、家にはお金はまるでなく、貧乏でした。しかし、彼は気にしませんでした。生活の豊かさよりは、「正しく生きる」ことを優先したからです。
そこに、いきなり朝鮮戦争が勃発したのです。病弱な母を抱えて避難しなければなりませんが、お金が全くありません。正しく生きた結果です。そこで、やむなくお金持ちに頭を下げてお金を借りようとしますが、あっさり断られてしまいます。彼らは、「人が困っているときに、お金を拒否したくせに、自分が困ったときに金を借りようなんて虫が良すぎる」と罵るのです。そして、「金こそ最も大事なものなんだよ」と捨てぜりふを吐きます。
校長は、それでも、「自分の生き方は決して間違っていなかった」と誇りを持ち、「私はそれでも正しく生きていく」と自分に言い聞かせるのです。
しかし、避難は困難を極めます。お金さえあれば汽車に乗っていけますが、徒歩で、しかも母を背負って逃げなくてはなりません。やがて水、食料が尽き、気力も体力も尽きました。ついに、母親が過労のために死んでしまいます。この時、彼の心の中に、「正しく生きてきたことが本当に良かったのだろうか」という疑いが芽生えてくるのです。「裏金を貯めてさえいれば、こんなことにはならなかったのでは?」。
傷心を抱いて田んぼ道を逃げる彼に、空から北朝鮮の戦闘機が機銃掃射を浴びせます。避難民は次々に弾に当たって死んでいきますが、彼は危ういところを、歩道から転げ落ちて助かります。
その時、彼の目の前に大きな鞄(かばん)が落ちてきたのです。落ちた衝撃で鞄が開きました。なんと、鞄にはぎっしりとお札が入っているではありませんか。
やがて、探しに来るであろう持ち主を待って返すか、それとも……。「私は今、正しく生きているか」。皆さんならどうしますか? 彼は激しい葛藤の末、良心を裏切りました。あまりの苦難のゆえに、良心の声を無視したのです。
彼は莫大(ばくだい)な金を元手にして、避難民でごった返す釜山で高利貸しを始めます。そして成功するのです。戦争後、ソウルに進出して大きな事業を興します。人もうらやむ豪邸に住み、安楽な生活を営みます。妻にはもちろん内緒です。時々、夜寝る前になると、良心が、「今、正しく生きているか」と投げ掛けますが、彼は耳を傾けません。良心を泣かせ続けていくのです。恐れを知らなくなった彼は、ついに国会議員に立候補します。一見誠実に見える彼の姿に多くの選挙民が支援します。ここまでは、すべてが順風満帆に見えました。しかし、絶頂を極めようとする正にその時、破局はやってきたのです。息子が結婚して、かわいい孫までできました。しかも嫁が気立てが良く、よく仕えてくれます。
彼は、いい嫁だと思いつつも、ある疑問を抱いていました。この嫁は、釜山の貧民街に住んでいたというのだが、それにしてもどこか気品があって、その上、英語の通訳の仕事をしていたというのです。「貧乏で学歴がないはずなのに、どうしてそんな仕事ができたのだろう?」という疑問です。
ある日、二人で食事をしているときに聞いてみました。嫁の答えは衝撃でした。
「私の祖父は小学校を出られないほど貧しく育ちましたが、苦労して事業を興し、成功しました。それで私は学校で英語を学ぶことができたのです。家が裕福で苦労知らずに育ったのです。ところが、祖父は晩年、『私は今、正しく生きているか』と自らに問い掛け、自分の若いころと同じ貧しい境遇にあるかわいそうな子供たちのために特別な学校をつくろうと思い立ったのです。それで、会社を売り払い、そのお金で、小学校に行けない子供たちの学校をつくろうとしたのです。そこに朝鮮戦争が起こったのです。
祖父は鞄(かばん)にお金を入れて逃げようとしたのですが、途中で鞄を落としてしまい、その時、亡くなってしまったのです。それ以来、私たち家族は貧乏に暮らしてきたのです。もし、鞄を拾った人が届けてくれさえすれば、こんなに苦しい生活はしなかったのです。私たち家族は鞄を拾って持ち逃げた人をとても怨んでいます。その人には良心がないのでしょうか?」
嫁の話を聞いて、彼の顔は真っ青になりました。彼の人生はこの瞬間から変わります。
彼は真剣に自分の良心と向き合います。「私は今、正しく生きているか」。葛藤の末、良心の声に従い、勇気を出して実践します。記者会見を開き、自分の罪を告白するのです。そして財産と名誉の一切を失いかけます。良心を苦しめ続けたために、自らを滅ぼしてしまったのです。
ところで、これはドラマですので、最後は鮮やかなハッピーエンドになります。勇気を出して良心に従ったとき、道は開けたのです。嫁の家族は返還されたお金で祖父の願いであった貧しい子供たちのための学校をつくります。正直に罪を告白した彼に選挙民が感動して、彼は国会議員に当選するのです。そして勇気を出して罪を告白した舅(しゅうと)を、嫁も許し、良い家庭を築いていくのです。ここまでで200話を超えるのです。(続く)
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次回は、第七章の「永遠の幸福人生」をお届けします。