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誤解されたイエスの福音 19

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「誤解されたイエスの福音」を毎週金曜日配信(予定)でお届けします。
 パウロのイエス観は果たして正しかったのか。イエス・キリストの再臨期を迎えた今、聖書の記述をもとに徹底検証します。

野村健二・著

(光言社・刊『誤解されたイエスの福音』〈2011111日初版第1刷発行〉より)

第二章 イエスの本来の使命

四、窮地に追いつめられていくイエス

 さて、このようにイエスを支えていくようにとアブラハムから2000年にもわたって神によって着々と準備されてきたザカリヤ家庭の洗礼ヨハネからも、両親のヨセフ、マリヤのいずれからも十分な援助が得られなかったイエスの路程は、その後どのようなものに変わっていくでしょうか。

サタンによる三大試練と救いの限界
 まずヨハネの脱落によって自分がメシヤであることを絶対的に保証する証(あか)し人(これを統一思想は「信仰基台」と呼んでいます)を失ってしまったイエスは、サタンを屈伏させることによって自ら洗礼ヨハネに代わる証し人としての、神もサタンも認める資格を回復しなければならなかったのだと統一思想では捉えます。それが「三大試練」(マタイ4111、マルコ11213 、ルカ4113)と呼ばれるもので、四十日四十夜の断食の後、サタンからの三つの問いに見事に答えられ、創世記にある神から人間に与えられた三大祝福(128)——「個性完成」、「子女繁殖」、「万物主管」の資格をすべて回復されます。(その詳細はこの短い論考では無理なので省略させていただきます。それについて知りたいと思われる方は、『原理講論』の410416頁をお読みください。)

 文鮮明(ムン・ソンミョン)師は、マリヤが、イエスの、洗礼ヨハネの妹との結婚の摂理に不熱心であったため、イエスは神から祝福された家族を持つことができず、独身のままで十字架にかけられて刑死されたので、天国を築くことができず、「天国に行くための待合室」——楽園しか実現させることができなかったと言われます。

 統一思想では、人間は堕落しなければ、蘇生(そせい)期(7歳まで)、長成期(14歳まで)、完成期(21歳まで)の合計21年で完成に達し(個性完成)、そこで神から祝福されて結婚し、真(まこと)の神の子を生み殖やし(子女繁殖)、こうしてつくられる真の神の家族が氏族、民族、国家、世界というように逐次拡大されて宇宙全体を真の愛で治めるようになる(万物主管)と見ます。このようにしてつくり出されるのが「天国」だというのです。

 それに対して、イエスは個性完成にまでは到達されたのですが、結婚ができないままで十字架上で刑死されたので、「実子」を持つことができませんでした。実子が存在しないので、そのイエスをどれほど信仰し、福音どおりのことを実践する努力をしたとしても、信徒はイエスの実子になることはできず、「養子」にしかなれないというのです。さらにそれ以前のアダムの血筋のままだとすれば、どれだけ努力しても、アダムが堕落したときに到達した成長の度合い——長成期完成級(14歳の基準)——を越えて行くことは不可能だと文鮮明師は言われますが、そこまでの基準レベルにまで到達するのが精一杯だというのです。

 それ以上の完成度がどのようなものかということを霊的に察知することはできるのですが、イエスの実子ではないので、肉的にはその状態を実現することはできず、そのため「霊肉分裂」の状態に陥る。このように、肉的には精一杯頑張っても長成期完成級止まりで、霊的な願望との対立で霊肉分裂となり、これが「楽園」の特徴だというのです。

 イエスご自身も個体としては神に等しい完成度に到達されたのですが(個性完成)、実子を生み殖やすことができなかったので、神の実子、家族、実の氏族、実の民族……からつくられる真の神の国である天国を構築されるまでには至らず、再臨の時代を迎えるまではずっと、養子だけの世界である楽園にとどまっておられ、天国は空っぽのままであったと文鮮明師は言われるのです(『天聖経』「地上生活と霊界」646頁)。

 ルカによる福音書には、イエスと共に十字架にかけられた犯罪人の一人はイエスの悪口を言い、もう一人は「イエスよ、あなたが御国の権威をもっておいでになる時には、わたしを思い出してください」と語りかけたのを受けて、イエスは「あなたはきょう、わたしと一緒にパラダイスにいるであろう」と言われたと書かれていますが(ルカ233943)、このパラダイスがほかならぬここでいう楽園(天国に達するまでの待合室)なのです。

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 次回は、「パウロの『救い』とは」をお届けします。


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