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青少年事情と教育を考える 285
日本の「成人力」は世界トップレベル

ナビゲーター:中田 孝誠

 日本は「成人力」が世界でもトップレベル─。
 OECD(経済協力開発機構)が実施した国際成人力調査(PIAAC)で、このような結果が昨年12月に公表されました。

 「成人力」というのは、各国の成人(この調査では16歳〜65歳)が持つ「課題を見つけて考える力」や「知識・情報を活用して課題を解決する力」など、社会で生きていくために必要とされる総合的な力です。知識の量を問うわけではありません。

 OECDの調査では、15歳を対象にした学習到達度調査(PISA)が有名ですが、成人力調査は、義務教育の内容が大人になってからの実生活でどの程度生かされているかを測っているともいえます。

 今回の調査は、2022年9月から翌年8月にかけて、31カ国・地域の約16万人が参加しました。日本は5100人余りが参加しています。

 調査で測定されたのは、「読解力」と「数的思考力」、それに「状況の変化に応じた問題解決能力」の三つです。
 例えば、幼稚園のルールを説明した文章から登園時間を読み取る、時間内に仕事を完了するための最短ルートの計画、といった問題が例として示されています(実際に出題された問題は公表されていません)。

 日本の結果を見ると、三つの分野のうち、「読解力」と「数的思考力」は参加国中フィンランドに次いで2位、「状況の変化に応じた問題解決能力」はフィンランドと共に1位でした。

 また、レベル1以下(低い習熟度)の割合が3カ国の中で最も少なく、レベル4以上(高い習熟度)の割合は2位でした。日本人は全体的に成人力が高いというわけです。
 こうしたスキルの高さは、生活満足度や健康状態にも良い影響を与えていると考えられています。

 その一方で、日本人の3割近い人が自分のスキルが仕事に必要なものより低いと答えました。
 例えばITスキル、チームワークやリーダーシップのスキルが自分に必要だと考える人が多くいました。
 また、自分が専攻したことと現在の仕事がミスマッチだという人も5割近くいます。

 調査を行ったOECDのシュライヒャー教育・スキル局長は、日本の教育は質が高く、システムの効率の良さが結果につながったと評価しています。

 一方で、「日本では大学レベルになると、大学で教わることの価値は何かということがあまり重視されていない」とも述べています(NHKウェブサイト2024年12月10日『あなたは解ける?「国際成人力調査」日本“世界トップレベル”』)。

 以前も書きましたが、日本の教育システムの評価が高いのは、教員が大きな役割を担っているからだといわれています。
 教員の働き方改革と資質の維持は今最も重要な教育課題の一つです。そして大学教育の価値とは何かについて、改めて考えていく必要がありそうです。