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女性の立場から見たレダ 3

(『世界家庭』2017年3月号「心情の十字架を超える道—女性の立場から見たレダ—(前)」より)

 『世界家庭』に掲載された飯野絢子(あやこ)さんの証しを、毎週水曜日配信(予定)でお届けします。

 飯野貞夫・天一国特別巡回師(777家庭)の夫人・絢子さん(2024年10月聖和、享年86)は、飯野巡回師と共に2008年から4年間にわたってレダ(パラグアイ)に滞在し、開拓にいそしむ日本人国家メシヤたちを支えました。そんな絢子夫人のレダでの歩みを紹介します。

▲飯野絢子さん(2011年)

創造本然のエデンの園のような大自然に圧倒される

 真の父母様の願いどおり、185家庭を二分して、現地と支援組とで、本格的な活動に入りました。夫は後方支援となり、日本に事務局を置いて責任を推進しながらも、立場上、現地との往来を頻繁に重ねていました。

 私も、20032月に、12年間滞在した米国から帰国してからは、レダ一色の日々となっていました。

 2002年の夏、まだ建設途上のその地を、私は初めて踏むことになります。そのときは40日ほどのわずかな滞在でしたが、真のお父様が「創造本然のエデンの園、自然がそのまま残っている」と語られたように、レダの大自然に圧倒される毎日でした。

 名もない草(ほとんどが薬草)にもトゲがあることの不思議。青く輝くプールの水——。全てのものに気が満ち満ちているという強い印象がありました。

 早朝415分頃からの訓読会はすでに伝統となっていましたが、古い建物の食堂が集会の場所でした。写真で見ていた大きな、りっぱなテーブルと思っていたそれは、板の上にテーブルクロスを載せただけの粗末なものでした。壁に掲げられたお写真に向かって聖歌を讃美し、『御旨と世界』を訓読し、祈って一日を出発するのでした。

 当時、岩澤正子さん(モーリシャス国家メシヤ、1800家庭)が、小学生になるかならないかの娘さんを伴って、4年間、夏ごとに奉仕しておられました。娘さんが早朝の訓読会に、お母さんと一緒に必ず参加していたのが印象的でした。大学生になった娘さんは昨年(2016年)、自ら志願して、レダで16年間継続してきた国際協力青年奉仕隊に参加しました。

 2002年から4年後の2006年が、二度目のレダ行きとなり、レダ奉仕が5回目となる岩澤さんとの日々でした。主に食事作りと掃除に専念しましたが、日本に「レダ通信」を送るのも二人の大切な日課でした。

▲現在の修練所が建つ前の旧台所で食事を作る飯野絢子さん(20027月、レダ)

 当時は、舟見亘さん(フィリピン国家メシヤ、777家庭)が農業担当で、畑が本当に充実していました。農業の経験などないとのことでしたが、ナスやピーマンなど、実のなる木は一本一本、きちんと添え木をするなど、こまごまと愛情を注ぎ、大切に育てていました。ところが、現地では野菜などあまり食べる習慣がないので、現地人の食事の担当者は、せっかくの収穫物を腐らせたり、鶏の餌にしたりしていたのです。そこに舟見さんの嘆きがありました。

 私と岩澤さんはその野菜を片っ端から調理し、食卓を賑やかにしました。朝は鳥と競争でトマトの収穫に走り、常に鳥に先行されて分が悪かった思い出があります。お日様の匂いがするトマトの丸かじりは人気の一品でした。収穫したものは、その10分後には食卓に並ぶように心掛けました。大元勘治さん(スロバキア国家メシヤ、1800家庭)がその半年前に植えていた里芋を収穫し、大量の煮物を作って皆でペロリと頂いたことも忘れられません。「レダで里芋」の感動はひとしおでした。

 現地の78月は冬で、南米といえども摂氏5度に下がる日がありました。ドラム缶の火鉢のようなものでまきを焚(た)き、カピバラを焼いて食べたのは鮮烈な思い出です。その肉は柔らかく、おいしいのですが、かわいらしいカピバラがまさか食用になるとは思いもしませんでした。

 ある日、ちょっとしたことがきっかけで、滞在者を二分するような激しい口論が始まりました。それは胸が痛む切ない光景でした。その日の「レダ通信」に私は以下のように書きました。「『主婦の眼』を『真の母の眼』に昇格させて見詰めざるをえないような出来事があった」と。

 レダ出発時のみ言には真の父母様の本音が随所に潜んでいて、悟らなければならない宿題が多いのです。最大の課題は、避けて通ることのできないアベル・カインの問題。国家メシヤに等しく託された最大の課題であると思いました。

 そういう中でも、神様ご自身が宿る力強い大自然は、最高のホストとして、常に私たちの心を励まし続けてくれました。

(続く)

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 次回は、「レダへの長期滞在までの10年は天の訓練の期間だった」をお届けします。