家庭力アップ講座 17
「私メッセージ」について

(APTF『真の家庭』230号[12月]より)

家庭教育アドバイザー 多田 聡夫

親の思いを子供に伝える方法

 私たちは、授受作用を通して、家族として存在する力、喜びを繁殖する力、様々な生活する力が湧き出てきます。授けていく力と受けていく力がひとつとなって家庭での授受の関係ができるようになります。

 親が、子供に愛を授け受けることとは、子供の気持ちを分かってあげたい、共感してあげたいと願う気持ちで、子供の話を聞くことです。そして、子供の気持ちに共感できた時に、親の愛情が子供に伝わるようになるのです。すると、子供が「親は、私の気持ちを分かってくれている」と感じるのです。私の親は、最大の理解者だと感じるようになるでしょう。子供の話を「聞く」ことを通して、親の愛情が子供に伝わるのが、「共感的聞き方」並びに「積極的聞き方」でした。

 授受作用のもうひとつの内容が、「話す」ということです。「話す」ことを通して愛情が子供に伝わるのが「私メッセージ」です。「私メッセージ」とは、自分の感情的思いではなく、共感したい思いで子供に接する自分の気持ちをそのままに、「私」という言葉を主語にして表現するのが「私メッセージ」です。「私メッセージ」の特徴は、相手の行動をよいとか悪いとかの評価を下さずに、自分はどう思うというふうに自分の気持ちを表現できることです。私の言葉の中に、私に対するどの「行動」が、私にどんな「影響」を与え、私がどんな「感情」を抱いたのかをしっかりと、子供に伝えることです。

 子供の気持ちを「共感」した土台の上になされるのが、ここで学ぶ「私メッセージ」です。「私メッセージ」とは、親の思いを、愛情を持って子供に伝え、子供が理解していける方法です。

 何度も何度も気持ちを共感できるように「聞き方」を実践していく中で、「私メッセージ」を用いて親の願いを子供に愛と共に伝えることができるようになるのです。慣れるまでは、難しく感じますが、子供の気持ちをしっかりと共感できるようになれば自然と「私メッセージ」を実践できるようになります。

 「私メッセージ」は、子供の行動を通し、親が問題を抱えた場合に用いる方法です。

 子供の行動や発言により親が問題を抱えたときに、どうするのかといえば、第1に「直接的に子供の行動を変えようとする」か、第2に「環境を変えようとする」か、第3に「自分自身を変えようとする」という三つの方向性があります。

 例を考えてみましょう。「テレビを見たり、ゲームをしたりして、なかなか勉強をしようとしない」という場合に、第1は、子供の行動を変えようとする。すなわち、テレビやゲームを見ないように注意したり怒ったりするのです。第2は、環境を変えようとする。すなわち、テレビをなくす。ゲームを捨てる。第3は、自分自身を変えようとする。すなわち、気持ちを共感しようとすることです。以上の3通りが考えられます。

 ここでまず、親と子供の位置を確認する必要があります。親子が心を一つにしたいときは、親と子が上下の関係ではなく、横の関係にならないと、心が一つになりません。親子の気持ちを一つにしていく努力が必要です。子供に対して上から目線や、指示命令では、子供の心はますます離れていきます。

 親は往々にして、子供の行動を変えたいと願いますが、子供の心に共感し、理解してあげたいと思えるようになりたいものです。

 親が子供に伝えたい「私メッセージ」を子供に送ろうとするのは、どのような時でしょうか。

 第1に、子供の行動や発言を親が受け止められない時、それをなんとかしたい時。第2に、親の気持ちを子供に理解させたい時。第3に、親の感情表現に対して子供に耳を傾けさせたい時。第4に、親の欲求にも子供が思いやりを示せるようにしたいとき「私メッセージ」が有効です。

子供に「理解される」には

 さて、どうしたら親として、子供に「理解される」のでしょうか。

①いつも自分に次の質問をしてみましょう
 「子供に対して、この返答は、本当に役に立つだろうか? それとも子供をただ、正したいという親の欲求を満たそうとしているだけなのか?」と自問してみましょう。そして、もし、自分の中に怒りの感情があるならば、まだ返答すべきではないと、理解しましょう。心が落ち着くまで待ってみましょう。

②「まず理解する」について考えてみましょう
 相手が何を大事に思っているのかを知り、この返答がどのように子供の目標達成に貢献するかを考えてみましょう。いつも子供にとっての「愛の言葉」で語りかけるようにしてみましょう。意外と親は、まず子供のほうに自分を理解してほしいと願ってしまうことがあります。まず、子供の気持ちを、「分かってあげたい」と思えるようになることです。

③子供と、子供がしたことは分けて考えましょう
 子供を責めないよう、自分の気持ちを伝えること。また、子供にレッテルを貼って、先入観で見ないようにしましょう。子供の行動の結果がどうなっているかを説明し、自分がどう感じたかを伝えるのです。子供と問題行動を一緒にしてしまうと、「自分はダメな人間だ」という間違ったメッセージが子供に伝わってしまい、子供は勘違いから自信を無くしてしまうこともあります。

④子供の、問題点について話すときは特に注意しましょう
 改善するつもりがない人に問題点を指摘しても意味がありません。脅かすだけで逆効果になることが多いのです。反発してしまい、関係がまずくなってしまうことも考えられます。改善できそうもないことは、指摘しないほうがよいのです。そして、すこし、時を待ってあげるのです。

(2月号に続く)