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共産主義の新しいカタチ 34

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

ライヒとフロムからフランクフルト学派へ
ウィルヘルム・ライヒ③

▲ウィルヘルム・ライヒ(ウィキペディアより)

個人の精神分析を大衆へ適応試みる
 フロイトを創始者とする精神分析的治療法(ユング派の分析心理学を含む)というものは、専ら「クライアント(患者)個人の無意識」の世界に分析家が没入し、その世界をレトルト・パッケージのような「器」に入れ、封をする作業にしばしば例えられます。

 ですから、ライヒが「個人」ではなくて「大衆」を相手に、「性政治」(ないしは「性科学」)という看板の下に「精神分析」を展開しようとしたことは、ウィーンのフロイトや彼の他の弟子たちにとっては、明らかに「無謀」のように映ったことでしょう。

 1920年代の前半にライヒにとっての知的・情熱的支えとなったものとして、シャラフは『ウィルヘルム・ライヒ〜生涯と業績〜』で、「フロイトと青年運動と精神分析の同僚たちがいた。彼らによって心理学、特に性の心理学に対して芽生えたばかりの彼の興味が方向づけられることになったのである。全般的な政情不安定と結びついてではあるが、ライヒがオーガズム機能を解明して、より広い社会的な観点に向かっていた1920年代後半に、彼はマルクス主義の社会的威力と革命的希望を発見した。情緒的かつ社会的に彼は多くの労働者たちの中に、開かれた心と単純さを見出した。それこそ、より『教養のある』友人や同僚の間で必至に求めながら得られなかったものである」と述べています。

 ライヒはまた、「性経済」の成立の源泉について、「性経済学は父が精神分析であり、母が社会学(マルクス主義)である」と『ファシズムの大衆心理』序文で述べていますが、「性経済」とは具体的には「有機体内部の生物学的エネルギーの経済、その配分に関わる学問」としました。シャラフの伝記では「経済という語を用いたことに、マルクス主義の影響が反映されている」と指摘しています。

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「移動式相談所」で避妊具実演も
 さてライヒは、ウィーンで性知識の啓蒙を目的とする「相談所」を設け、パンフレットを作成し、市民に配布しました。次女ローレが生まれた1928年、「性相談と性科学研究のための社会主義協会」を設立、1930年まで運営し、1929年には、「労働者と雇用者のための性衛生相談所」をつくり、妊娠調節、育児、性教育などの情報を提供し、公開討論会も開きました。

 ただし「相談所」と言っても実際は幌付きトラックによる移動式のものでした。シャラフの記述によれば、19281929年の春と夏の間ライヒは、小児科医、産婦人科医、それに友達のリア・ラスツキ(妻子あるライヒと不倫関係にあった)と週に何日かウィーン周辺の郊外や田舎に幌付き貨物自動車で出かけ、地域の公園に集まった人々に向かい、ライヒらは、性的な事柄について話をしました(ライヒは思春期の青少年や大人の男たち、産婦人科医は女性たちと、保育園教師のリアは子供たちと)。

 産婦人科医は、避妊具を処方したり装着したりする実演を行いました。そして性情報に関するパンフレット・小冊子を一軒一軒配布して歩きました。

共産主義による大衆救済に期待
 臨床的かつ社会的双方の期待を統合しようというライヒ独自の企ては次のようなものでした。

 「性格分析が個人を内的抑圧から解放して、自然のエネルギーが自由に流れるようにすることができるのと同様に、ラディカルな社会主義者と共産主義者なら大衆を外的抑圧から救って、自然な社会的調和、すなわち『階級のない』社会を生み出せるのではないか。ライヒはそのように期待した。少し言い方を変えるなら、政治的左翼に強く働きかけたいというライヒの希望は、個人の急速な変化をもたらす方策はないだろうかという彼の臨床的探究と並行していた。それゆえ、性器的突破があれば、たとえ心理的葛藤が未解決であっても分析を長引かせることなく患者は自由になることができるはずである。同様に、決断力に富む指導者に社会革命が唱道されるなら、市民の間でいろいろな心配や矛盾があっても、社会的に突破が起こるであろう」(M・シャラフ『ウィルヘルム・ライヒ』)

 しかし、ライヒは共産党と結びついたゆえオーストリア社民党から除名され、フロイトの弟子たちとの確執などから、1930年にフロイトの「お膝元」のウィーンを離れ、ベルリンに移住。ここで開業したライヒは、エーリッヒ・フロムをはじめフロイト派の若手精神分析家らに少なからぬ影響を与えました。ワイマール体制下のドイツでライヒは、社民党から分かれ第三勢力となっていた共産党と歩調を共にします。

「思想新聞」2024年9月15日号より

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