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シリーズ・「宗教」を読み解く 337
イグナチオ・デ・ロヨラの霊性⑤
アビラの聖テレジアと十字架の聖ヨハネ

ナビゲーター:石丸 志信

 16世紀初頭の刷新・改革の機運に乗って、イベリア半島では神秘思想家や改革精神に満ちた修道者の群れが現れてくる。
 その先駆となったのは、間違いなくイグナチオとその仲間たちの動きであった。

 イグナチオの霊的覚醒とその後の動きは後で述べるとして、彼に続く、イベリア半島を代表する神秘思想家の一人がアビラの聖テレジア(聖テレサ、15151582)である。

▲アビラの聖テレジア(ウィキペディアより)

 キリスト教に改宗したユダヤ人の父を持つテレジアは、20歳の時にその町の女子カルメル修道会に入会した。
 3年後に重い病にかかり一時昏睡状態に陥った。病との戦いを通して、彼女は自らの内面の弱さを知り、十数年間、格闘を続けることになる。

 ところが、ある日突然もたらされた神秘体験を通して、長い試練の時が終わった。
 その時の体験を、彼女は『自叙伝』にこう記した。

 「突然神の存在がわたしに迫ってきて、神がわたしのうちにおいでになる」(『女性の神秘家・教会博士』教皇ベネディクト16世 カトリック中央協議会 パウロ文庫、161ページ)

 こうした神秘体験を得て、彼女は修道会の改革を具体的に推し進めていくのだった。

 修道女・聖テレジアの改革の原動力は、内から湧き起こる内的動機に基づいていた。
 彼女の願いは、いかにイエス・キリストを友として親しく交わることができるのか、というものだった。

 「私が知ったのは、あの偉大なる神が、あろうことか、人間でもあられたということでした。私どもから身を引かれるどころか、私どもをよく理解してくださる人間であられたのです」(『魂の配慮の歴史6 宗教改革期の牧会者たち』クリスティアン・メラー編、56ページ)

 聖テレジアは、救い主イエス・キリストとの人格的な出会いを通して、神秘のうちに深い愛を体験する修道霊性の体現者として生き、修道共同体の姉妹たちを導きながら、修道会の刷新を図っていくことになる。

 また、聖テレジアの改革の精神を受け継ぎ、協労者として実践していくのが、司祭になったばかりの若きカルメル会士、十字架の聖ヨハネ(15421591)だった。

▲十字架のヨハネ(ウィキペディアより)

 聖ヨハネは、聖テレジアの改革計画に賛同して、男子カルメル会の刷新を図るとともに、聖テレジアの創設した修道院において、聴罪司祭、副院長として精力的に働き、説教や霊的指導に勤め、著作の執筆にも当たっている。

 彼らの精力的な働きによって、スペイン霊性は黄金期を迎えることになる。



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